日本のオフィス、特にホワイトカラーの生産性は、ここ10年ほとんど上がっていないと言われている。パソコンを導入し、様々なオフィス・ソフトを利用することによってオフィス作業を効率化しようとする取り組みは以前から行われているが、工場の生産作業の自動化に比べ、オフィスでは効果的なシステム化がなされていない。

 我々の周りを見回しても分かるとおり、基幹業務処理を除く、日常的なオフィス業務の多くは、属人的なノウハウと限られたツールの工夫で成立している。

システム化できていない業務プロセスは山ほどある

 生産性を高めるための鍵は、プロセス管理にある。我々の日常業務は、すべてプロセスで成り立っている。顧客からの問い合わせ対応しかり、プロジェクト形式の作業工程しかり、営業の顧客回りしかりだ。前回説明した情報共有も、このプロセスの中に組み込まれる重要な要素の一つであるといえる。

 これらのプロセスの管理をすべて人的に行おうとすると非常に労力がかかる。しかも、これらをワークフロー・システムとして作り込むことは、一つひとつのプロセスに様々なバリエーションがあり状況によって変化するため、大変難しい。

 一方、全社レベルの大規模な業務プロセスでも、システム化しにくいケースがある。例えば苦情処理は業種にもよるが、内容によってどのルートで対応するかが変わってくる。このため要件定義が困難で、工場の生産ラインのように固定的なシステムに乗せることが難しい場合がある。

 特に苦情処理は、直接の利益に結びつかない後始末的な業務。最近でこそ、苦情の中から次のビジネスのヒントを見つけようといった観点も出てきてはいるが、あまり積極的に投資しないというのが従来の流れだった。

 このように、既存のITでは対応が難しい業務が、我々の周りには山ほど残っている。そうした業務では、社員一人ひとりがExcelデータなどを頼りにあちらの状況を見て、こちらの状況も見て、日々疲弊しながら人的にプロセス管理を行っているのが実情だ。

 たった一人の作業に関する日常的なプロセスから、全社的な対応にかかわる大規模プロセスまでタイプは様々である。ここを効率化しないことには、一人の人間が手で管理できるプロセスの数には限度があり、オフィスの生産性および収益の向上には頭打ちが来る。

 このような状況に対して、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)は様々なレベルの回答を出せる可能性を秘めている。これから「プロセス管理」に関するPaaSの利用方法について、事例を通して考えていきたい。PaaSのターゲットを示すマトリクス図でいうと、網掛け部分になる(図4)。

図4●PaaS に適しているアプリケーション領域(プロセス中心型)
図4●PaaS に適しているアプリケーション領域(プロセス中心型)