ITエンジニアは「製品やサービスのことを語るのが大好きな人種だ」と周りから見られている。
私はビジネス・スキルの研修で「お客様が一番関心を持っているのはプライベート,2番目が人に関すること,そして3番目が仕事に関することだ」と教えている。誰だって,親や子供が病気になれば仕事よりも重大事であるのは間違いないし,息子や娘が大学受験していれば落ち着かないのが親心というものだ。しかしITエンジニアは,飲み屋でも社内でも客先でも,仕事に関する話をしたがる。なぜなのだろう?
若い技術者は,部門の上司や先輩をお手本として多くのことを学ぶ。自分の会社はどんな会社なのか,社内ではどういう風に振る舞うべきなのか,どうすれば気に入られるのか,評価されるのかといったことを周りから敏感に感じ取って,お手本として真似るものだ。その上司や先輩が仕事の話ばかりしていたら,彼らもそうなってしまうのは当然のことだ。
また,ITエンジニアの世界では「手がすいていることは悪」と考える風潮があるように思える。これが一番の問題だろう。仕事に関係ない雑談をしていると遊んでいると思われてしまうし,他部門に立ち寄ることも暇つぶしみたいに思われてしまう。一生懸命に仕事をしているように装っているのだ。そして,仕事をしているように周りに思わせる一番いい方法が,製品やサービスの話題で盛り上がっていることなのだ。
顧客のことを何でも知る
自社や業界の製品やサービスのことばかりを語りたがるITエンジニアは,ITの前に人間としての常識に目を向けてほしい。システム開発にしろ,プロジェクトにしろ,売り込みにしろ,最も重要な成功要因は「信頼関係」だということに目を向けてほしいのだ。信頼関係があれば「君が言うのなら」と言って受け入れてもらえる。
製品やサービスに関することばかりを話していては,顧客と信頼関係を築くことはできない。最も重要なものは顧客に関する知識である。顧客のシステムがどうなっているのか,いつ構築されたのか,目的は何だったのか,今後どうしたいと考えているのか。顧客のことが分からなければ正しいアドバイスをすることはできない。顧客に関する知識を増やすことこそが,システム開発やプロジェクトを成功に導き,顧客からの信頼につながる。
【顧客を知るための行動習慣】
1.顧客の情報に小まめに目を通す
2.顧客の事業内容を体験する
3.雑談に花を咲かせる |
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