今回のポイント
Dull,Dark,Light,Vivid
標準灰色
トーンによる印象
補色と等色相差

 今回は色の使い方について,少しつっこんだお話をしましょう。色味を表現する形容詞や,ある色の色味を変えた「トーン・バリエーション」から喚起されるイメージなどについて説明した後,色を組み合わせる際の考え方について,以前に紹介した「同系色の組み合わせ」から一歩進んだ知識を紹介します。

色味を表現する形容詞と明るさの基準

 古くからある日本語の色の呼称は,その色を持つ物体からつけられることがよくあります。例えば「藍色」「橙色」「鶯色」「茜色」などはわかりやすい例です。こうした呼称はあいまいさもあります。「ねずみ色」と「灰色」はどちらもグレーを指しますが,果たしてどちらが暗い灰色なのかは微妙です。日本語は何事に対してもあいまいさが美徳とされる言語なのです。

 あいまいな日本語の世界は置いておくとして,英語では色のバリエーションについての表現が割とハッキリしています。具体的には,ベースとなる色に対して,次のような形容詞を付けて,その色の「色味」を表現します(表1)。

表1●色味を表現するための形容詞
形容詞 読み 色味
Vivid ビビッド 鮮やかな
Dull ダル 鈍い
Dark ダーク 暗い
Light ライト 明るい

 原色をビビッドと言います。暗い赤は「ダーク・レッド」,明るい黄色は「ライト・イエロー」のように呼びます。

 色味のバリエーションについて理解するため,頭の中でパレットと絵の具を想像してください。原色は“絵の具のチューブから絞り出したままの色”だと考えてください。原色は必ずしも赤や青などの三原色だけとは限りません。深緑でもこげ茶でもいいです。好きな色で想像してください。

 この絵の具のほかに,黒と白の絵の具を用意してパレットに置きます。原色に対して白を混ぜていったものがライトです。反対に黒を混ぜていくとダークになります。次に白と黒を混ぜて灰色を作り,その灰色と原色を混ぜてみます。これがダルです。白を混ぜればライト,黒fを混ぜればダーク,そしてグレーを混ぜたらダルです。

 パレットに出した絵の具が,赤い絵の具であれば図1のようになります。どのように調整したのかがわかるようにRGB表記も入れておきます。

図1●赤のバリエーション。明度と彩度の変化で呼称が決まる
図1●赤のバリエーション。明度と彩度の変化で呼称が決まる

 この図の背景に使っている色は「標準灰色」と呼ばれる反射率18%のグレーです。標準灰色は色彩について学ぶ時の“魔法のグレー”です。写真好きの人であればご存じかもしれません。自然界に存在する色をすべて混色すると,反射率18%の灰色と同じ明るさになると言われています(あるいは人肌の標準反射率が18%等諸説あります)。どの説が正しいかはともかく,カメラはレンズを通過してきた光の平均値は,この18%グレーであると解釈して露出やシャッタースピードを調整します。

 自然界の色の平均値が18%グレーだということは,ある色を18%グレーの上に置いた時に,それが18%のグレーよりも暗ければ,誰でもが暗い色だと認識するであろうし,グレーよりも明るければ明るい色だと認識されるだろうという,ひとつの判断基準になります。ちなみに反射率18%のグレーはRGB表記でいうとおおよそ#777777になります。18%というのは反射率であって明度ではないので,本来はどんな素材にこの色を印刷するかで濃度の調整をしなくてはなりません。#777777は目安だと理解してください。何かのテストで目安としての標準灰色を出したいという場合に指定してみてください。