ユーザー企業個別に、マシンルームの熱分布の状況を可視化する。NECなどはこうした提案スタイルで、空調設備や電源装置、サーバーラックといった個々の設備のグリーン化を促進する「ファシリティの最適化」支援サービスを売り込み始めた。

 NECは、マシンルームの発熱状況を調査・分析する「熱シミュレーションサービス」を今年1月から提供している。担当者がユーザー企業に直接訪問し、マシンルームに熱感知センサーを設置。これにより熱分布の実態を検証する。

 調査結果は、マシンルーム全体の熱分布を緑色や赤色などフルカラー画像でユーザー企業に提示する。現状分析だけではなく、空調設備やサーバーラックの設置場所を最適化し、その場合の熱分布も提案する。使用前・使用後の姿の差異を際立たせ、ユーザー企業の関心を引き付ける。

 同様のサービスを富士通も2007年12月から始めている。その際の武器は、独自開発ソフト。このソフトに、ユーザー企業からヒアリングしたマシンルームの現状に関するデータを入力すると、温度や風量の状況だけでなく、空調設備への負荷を可視化できる。

 このアセスメント・サービスは同社の「グリーン・インフラ・ソリューション」のメニューの一つだ。基本料金は、100平方メートルのマシンルームの場合で約200万円である。

 ファシリティの最適化支援には、リコーテクノシステムズも熱心だ。「ブレードの設置場所や水冷ラックの効果などを、具体的なイメージを交えて説明すると、商談が上手くいくケースが増えてきた」。同社の山形起生ITサービス事業本部ITファシリティ事業推進室部長は話す。同社はブレードサーバーと一緒に、排熱方法を改善する局所冷却装置などを売り込む。

次世代データセンターで手間ゼロを訴求

 ファシリティを最適化するため、次世代データセンターの活用を提案する手もある。既にNRIやCTC、大手サーバーメーカーなどが相次いで、次世代データセンターを建設している()。

表●「グリーンIT対応」をうたい文句にしている主なデータセンター(2007年後半以降に発表されたものを掲載)
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表●「グリーンIT対応」をうたい文句にしている主なデータセンター(2007年後半以降に発表されたものを掲載)

 「次世代データセンターは、地球温暖化防止に貢献するさまざまな最新技術を結集したもの。グリーンITソリューションの中核“商材”だ」。CTCのデータセンター技術戦略室の赤木央一氏は言い切る。次世代データセンターは、最新の排熱システムや空調機器、冷却装置などを導入している。

 次世代データセンターの利用効果をどうやって可視化するのか。答えは単純だ。「システム部門のエコ対策にかかる手間をゼロにする」ということである。

 経営層からエコ対策を迫られているシステム部門が、システム全体を見直し、具体的な対策を講じようとすると、膨大な手間がかかる。サーバーやストレージといったIT機器すべての発熱量をチェックするだけでも気が遠くなる。

 さらに排熱を考慮したサーバーの移設、空調設備の見直しなども不可欠。エコ対策の作業範囲は多岐にわたる。

 こうした現状から、次世代データセンターの活用という提案は、エコ対策に悩むシステム部門に“ささる”可能性が高い。IDC Japanの鈴木康介ストレージシステムズリサーチマネージャーは「IT資産のアウトソーシングに抵抗感を抱いているユーザー企業であっても、グリーンITを実現するために、次世代データセンターの活用を前向きに検討するところが増えるだろう」と予測する。

 需要の高まりを確信してかCTCは、省電力型のサーバーやストレージを採用したITインフラのアウトソーシングを始める。今年4月から提供する「IT統合基盤サービス」だ(図4)。

図4●伊藤忠テクノソリューションズは、「IT統合基盤サービス」をグリーンITソリューションの目玉商材の一つとしている
図4●伊藤忠テクノソリューションズは、「IT統合基盤サービス」をグリーンITソリューションの目玉商材の一つとしている

 「このサービスを利用すれば、システム部門はグリーンIT対策に頭を悩ませる必要はなくなる」。CTCの唐木眞データセンター技術戦略室室長補佐は言い切る。