「最近、グリーンITという言葉が、ユーザー企業にウケるようになってきた」。シーティーシー・エスピーの渡辺裕介第1営業本部営業推進部部長はこう手応えを感じている。今まさに“グリーンITビジネス”が立ち上がろうとしている。

 グリーンITを巡っては、フォローの風も吹いている。野村総合研究所(NRI)の椎野孝雄理事は「省エネルギー法の改正などをきっかけに、ユーザー企業は、システムや生産設備などさまざまな面からグリーン化に取り組もうとしている」と述べる。

 「こうした機運を逃すな」とばかりに、多くのソリューションプロバイダが動き出した。大塚商会や伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NRIをはじめ、NECや日本IBM、日立製作所、富士通などの大手メーカーがそうである。

 各社はグリーンITソリューションとして、ブレードサーバーや文書管理システム、ファシリティの最適化支援サービスなどを売り込む(図1)。ここで注目すべきは、ユーザー企業の関心を引き付けるための提案方法だ。

図1●グリーンITはソリューションプロバイダの商機となる
図1●グリーンITはソリューションプロバイダの商機となる
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 多くのソリューションプロバイダが「電気代」や「二酸化炭素(CO2)排出量」をどれだけ削減できるかを具体的に提案している。さらにユーザー企業ごとに「マシンルームの熱分布の実態」をイメージ図で示す。こうして、エコの観点からシステム関連設備を見直すべきであることをユーザー企業に訴える。ソリューションプロバイダ各社は、グリーンIT化による効果の可視化に心血を注いでいる。

 CSR(企業の社会的責任)の観点からも、ユーザー企業は省エネルギー対策という課題を無視できない。そもそもグリーン化は国家プロジェクトだ。「(日本全体で)2008~2012年までの間に、CO2など温室効果ガスの排出量を6%削減する」。京都議定書で定めたこの約束を果たすため、企業はエコ対策を進めなければならないのである。

NTTデータはCO2排出権取引システムを横展開

 現在、国家間で取り引きされることが多いCO2排出権取引。実際に国同士の取引システムは稼働している。日本の窓口となるシステムを開発したのがNTTデータ。そのノウハウを同社は、ユーザー企業に展開しようとしている(図A)。

図A●NTTデータはCO2排出権取引のための情報システムをユーザー企業に提案している
図A●NTTデータはCO2排出権取引のための情報システムをユーザー企業に提案している
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 CO2排出量取引とは、CO2を排出する権利を国や地域、企業間で売買する行為である。CO2削減目標を達成するのが困難な企業が、目標以上にCO2を削減できている他の企業から権利を購入する形態を取る。

 NTTデータの近藤亘 第二公共システム事業部第三システム統括部営業担当課長は、「システム構築だけでなく、社内の管理体制をどうすべきといったコンサルティングも手掛ける」と意気込む。システム構築費用は、企業ごとにカスタマイズが必要となるため、数千万円程度になるという。

 NTTデータは今年から営業攻勢をかける。これまでCO2排出権取引向けシステムの担当者は10人だったが、公共や金融といった事業でもソリューションを提供できる体制を整える。