「中国語禁止」。中国・大連にあるアクセンチュア中国の開発拠点では、中国人の技術者は全員、英語か日本語を使う。チ・ウェイ・ワン副社長兼チャイナデリバリーセンター ジェネラル・マネージャーは「顧客との対話に必要なスキルを磨くための訓練だ」と説明する(写真1)。
アクセンチュアは大連、上海、広州の3カ所にデリバリーセンターを設けている(写真2)。人数は非公開だが年40~50%のペースで増えているという。
アクセンチュアの人材活用戦略の特徴は、技術者が全員、正社員であることだ。中国では、新卒社員を契約社員として採用し、経験を積ませてから正社員として採用し直す会社が少なくない。人材を「ふるい」にかける戦略だ。だが、こうした戦略について、ワン副社長は「技術者の離職率増加につながる」と否定的な見方を示す。
「ライバル企業への転職は皆無」
アクセンチュアが正社員採用にこだわるのは、「中長期的な視点で人材を育成するため」(ワン副社長)だ。グローバルで統一した教育カリキュラムを受けさせたり、自社独自の開発方法論を教え込むなど、「正社員だからこそ、教育に多額の投資ができる」(同)。
気になる離職率はどうなのか。ワン副社長は「中国のIT企業の平均である20~30%の半分以下だ」と胸を張る。特に、入社5年以上のリーダー・クラスでは、「ライバル企業に移った人は皆無」(同)。「グローバルの仕事に携われる、キャリアパスが明確、世界で活躍するチャンスがある、などのインセンティブが働いている」とみる。
アクセンチュアが中国にデリバリーセンターを設けたのは2002年の大連が最初だ。それから6年が経ち、教育の成果も表れている。例えば、独SAPのソフト製品を扱える技術者は、03年はほぼゼロだったが、今は「数百人いる」(同)。
SAP製品の教育であれば、インドなど海外の自社拠点から講師を招いて、中国人技術者に各種モジュールやABAP(SAP製品独自の開発言語)、業種別テンプレートなどのトレーニングを施す。それから、講師役のプロジェクトマネジャの指導の下で、実際のプロジェクトに参加させ、OJTでSAP製品の導入経験を獲得させる。そうして、1人前のSAP技術者に育てる。ワン副社長は「中国は優秀な人材の宝庫。若手技術者たちの力を、グローバルでの競争力強化に直結させていきたい」と意気込む。
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