電子マネーの「Edy」(エディー)をご存知だろうか? ロゴが付いた専用カードやクレジット・カードに,あらかじめ設定した金額をチャージし,Edy対応の店舗でレジ横にある端末へそれを近づけると「チャリ~ン」(「シャリ~ン」と聞こえる人が多数派)という音とともに決済が完了する。これがEdyサービスだ。

 Edyのロゴが付いていなくても,「おサイフケータイ」対応の携帯電話を持っていれば,Edyに対応させるアプリケーションを導入することで,Edyカードと同じように使える。多くのコンビニやスーパーマーケット,ドラッグショップなどで対応している。2001年からスタートしており,読者の多くも少なからず利用されていることだろう。

 ところが2008年4月,このEdyサービスに大きな変革が起こった。サービスの一部が利用できなくなってしまうのだ。一部とは言うが,これによって大打撃を受ける利用者もいることだろう。

クレジット・カードより3倍「おいしい」

 まずEdyの良さは,「チャリ~ン」とスマートに決済できるだけではない。支払いを実質的にクレジット・カードにできる点だ。

 Edyは,小型のATM(現金自動預け払い機)のような専用マシンで現金をチャージできるだけでなく,パソコンと接続した専用リーダーを介して登録済みのクレジット・カードから直接決済できる。携帯電話であればEdyに対応させるアプリケーション上から,リーダーなしでクレジット・カードで決済することも可能だ。

 つまり,クレジット・カード会社からの決済に対する特典であるポイントをもらえるのだ。このポイントは,商品やギフト・カードに交換したり,航空会社のマイレージ・ポイントなど,別のポイント・システムに移行したりできる。

 もっとも,Edy対応のショップの多くは,元々クレジット・カード決済も可能なところが多い。Edyを使わずにクレジット・カードを使えばよいと思われるかもしれない。しかしEdy払いは,クレジット・カード決済より優遇されることが多いのだ。

 例えば,家電量販店のヨドバシカメラやドラッグ・ショップのマツモトキヨシでは,クレジット・カードで代金を決済すると,ポイント付与率が下がる。しかし,Edyは現金払いと同じポイント数をもらえる。

 また,航空会社の全日空(ANA)のEdyカードを使うか,もしくはEdyに対応させたおサイフケータイにANAの専用アプリケーションを導入しておけば,Edyの決済200円ごとに1マイルのマイレージ・ポイントがもらえるといった特典が付く(たばこなどの対象外商品もある。後述する代行収納も対象外)。

 つまり,1回の決済で,クレジット・カード会社からの「チャージ」によるポイント,購入時の販売店のポイント,さらにANAのマイレージ・ポイントと,3倍おいしいこともあるのだ。

一部の税金や国民年金をEdy払い可能にする「代行収納」

 Edyには,さらにおいしいメリットがもう1つある。それは,クレジット・カードで本来決済できない支払いを,Edyを使って実質的にクレジット・カード払いにすることだ。

 例えば,自動車税の支払い。一部の公共料金などと違い,クレジット・カードを使って支払うことはできない。しかし,バーコードが付いた支払い票を使って,多くのコンビニで支払いが可能になっている。このときの支払いに,Edyを使うのだ。この支払い方法を「代行収納」と呼ぶ。

 そうすれば,実質的にクレジット・カードで決済できるのだ。これは,自動車税のほかに,地方自治体によっては住民税(普通徴収のみ)やパルシステムといった宅配システムの支払いなども,同じである。ただし,コンビニでEdy払いが可能になるのは,支払い票にバーコードが付いているときだけである。

 ここまでに紹介したEdyの用途は,おサイフケータイさえあれば,簡単に実現可能だ。Edyカードは前述の専用リーダーが必要だが,3000円弱程度で購入できる。これだけのメリットを聞けば,購入しても損はないと思うだろう。

代行収納が終了してしまう

 前述した「大きな変革」とは,このEdyによる代行収納が2008年6月いっぱいで終了することが決まったことだ。

 Edyによる代行収納を認めていたコンビニは,am/pmやファミリーマート,サークルKサンクス,ポプラの4つのチェーン。am/pmとファミリーマートは2008年3月末,ポプラは同4月末,サークルKサンクスは同6月末で代行収納を終了する。

 記者は,代行収納を年間に100万円近く利用していた。これによるメリットは,クレジット・カードのポイントで実質1万円以上。これがなくなるのは痛い。

 しかし,腹立たしいのは,今回のアナウンスが急だったこと。例えば,3月末で終了になるam/pmとファミリーマートの公式発表は3月上旬に行われた。十分な周知期間がないため,4月に発行される国民年金の支払い票のために,あらかじめチャージしてしまった人もいるだろう。そういう方に対する救済策も用意されていない。

 最近では,クレジット・カード決済による電子マネーのチャージに対して,ポイントの付与を中止するクレジット・カード会社が増えている。このような状況を考えれば,今回の「改悪」はいたし方ないのかもしれない。

 しかしながら,十分な周知期間も救済策もないまま,ルールを大きく変更するのは,利用者を馬鹿にしているとしか言いようがない。チャージ済みのEdyは,元に戻せないからだ。メディアでは,電子マネーに関する法整備の遅れが取り沙汰されるが,その前に焦って行われたのだろうか。ねえ,Edyサービスを提供するビットワレットさん?

■変更履歴
公開当初は,「国民年金はクレジット・カードを使って支払うことができない」としておりましたが,2008年3月分よりクレジット・カードによる支払いが可能になりました。そのため,該当部分の本文を修正しました。お詫びして訂正いたします。 [2008/04/15 18:35]