日ごろストレスを実感していても,改めてそれが何であるかと問われると,明確に答えるのは難しいだろう。ストレスは目に見えず,とらえどころがないからだ。しかしストレスを解消するためには,それが何であるかを認識しておきたい。

 医学的なストレスの定義は,「何らかの刺激(ストレッサー)が心身に加えられた結果,心身が示したゆがみや変調のこと」である。ゆがんだ部分が元に戻ろうとする力が,仕事などを行う人間の活力になるという。

適度なレベルを保つことが重要

 もっと分かりやすく説明するため,ライフバランス マネジメントの渡部さんの言葉を借りると,ストレスとは人間のなかにあって活力を生む“エンジン”が回ることに例えられるという。「適度にエンジンを回していればバリバリ仕事ができるが,アクセルをふかしっぱなしにするとオーバーヒートになり,活力が削がれたり病を引き起こしたりする」(渡部さん)。

 つまり,ストレスは必ずしも悪いものではない。うまくコントロールして適度なレベルを保つことが重要なのだ。しかし激務と重圧にさらされるITの現場では,どうしてもストレスがたまりがちになる。そこで,「今のストレス・レベルを自覚する」「ストレス・レベルを下げる」の二つを日ごろから心掛ける必要がある。

 このうち「今のストレス・レベルを自覚する」には,日ごろから自分のストレス・レベルに注意を向けて把握するように努めたい。46ページの図1に示したストレス・レベル診断テストを定期的に行うのが一つの方法である。そのほか,ストレスが過剰になると,体の様々な部分に変調として表れるので,それを見逃さないことも重要だ(図4)。

図4●過剰なストレスが原因となる病気の例
図4●過剰なストレスが原因となる病気の例
ストレスが過剰になると,心や体の様々な部位に病気となって表れる。ここに示したのは,ほんの一例である。一度かかると完治しない・再発しやすいという病気が少なくないので,くれぐれも用心が必要だ

 またマネージャの立場にいる人は,部下やメンバーのストレス・レベルにも気を配る必要がある。日立製作所の建部清美さん(情報・通信グループ プロジェクトマネジメント統括推進本部 本部長)は,「オフィスを歩き回って,メンバーがいつもと違う表情や雰囲気になっていないか探るのが基本。ただし目を合わせると取り繕うメンバーがいるので,後ろから気付かれないように仕事をしている様子を見るようにしている」という。