ひまわりホールディングスの中野和彦・執行役員情報システム部長
ひまわりホールディングスの中野和彦・執行役員情報システム部長

 「当社のように『ネット証券』の看板を掲げ、現物株取引、信用取引、証券デリバティブ、外国為替証拠金(FX)取引などすべてのサービスをインターネット経由で提供し、電話や対面での取り引きを原則行っていない会社は、情報システムが良くないと業績も上がっていかない。IT(情報技術)は会社のすべてと言ってもいい」

 ひまわり証券を中核事業子会社とするひまわりホールディングスの中野執行役員は、同社にとってのITの意義をこう説明する。そんな同社が今注力しているサービスの1つが、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開する形でのシステムトレード「トレードシグナル」だ。中野執行役員は、「米グーグルは様々なAPIを公開して業績を拡大し続けてきた。金融会社でも今後こうしたグーグル的なアプローチの事業が増えるのではないか」と、2008年1月から本格提供を始めたトレードシグナルへの期待感をこう補足する。

 システムトレードは、投資家の経験や勘ではなく、エクセルや専用ソフトなどを使って事前に設定した売買ルールで株や為替や先物を機械的に発注する方法を指す。日本の個人投資家は米国に比べてシステムトレードの普及が遅れているため、専用ソフトとサービスをセットで提供している証券会社が多い。これに対してひまわり証券は、APIを公開して複数の市販ソフトに対応するオープンな方針を採った。米トレードステーション、オートマチックトレード(大阪市中央区)、シーエムシー(東京都中央区)などのシステムトレードソフトに対応している。今後さらに対応ソフトが増える可能性がある。

 実は、ひまわり証券は約10年前の1998年10月8日、国内で初めて個人投資家向けにFX取引を開始した会社としても知られる。同社の現在のFX取引口座数は約10万。矢野経済研究所の調査によると、FX口座数は業界全体で2008年3月末に100万を突破したと見られる。2005年から続いたドル高・円安を背景に、2005年3月末に約18万だった口座数は、2007年3月末には約64万まで拡大。2007年夏以降はドル安・円高基調に転じたものの、FXブームは続いている。

 同社は2005年11月から、CFD(差額決済)取引も日本で最初にスタートさせている。1つの口座で、株式の個別銘柄や先物銘柄などを、総取引金額の10~100%の証拠金で売買できる。諸外国の通貨を証拠金で売買するFX取引の証券版のようなものだ。また、次々と新サービスを投入してきたひまわり証券のウェブサイトでは毎営業日、映像と音声とスライドを使った多様なセミナー番組を2~4つ無料で生放送する。チャットによる講師への質問も可能である。番組のいくつかは録画され、オンデマンドでいつでも閲覧できる。大半のセミナーは同社社員が講師を務めており、この4年間で累計20万人の個人投資家が受講した。

 「当社は、他の証券会社と違うこと、新しいことをやり続けることを重視している。そのために、IT部門はできるだけオープンソースを活用し、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を実現する環境作りに力を入れている。常に『3年後にはこのくらいのことができているのではないか』と考えながら、IT戦略を練る。数年後か10年後か分からないが、いずれは東京証券取引所が24時間体制となり、従来以上にグローバルに個人投資家が取引できるようになるはず。ネット証券がやれることはどんどん広がっていく」-----。こう言い切る中野執行役員は、経営企画グループなどと密接にコミュニケーションを取りながら、新たなIT戦略の策定に余念がない。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・ITの専門用語をなるべく分かりやすい言葉に置きかえて、経営トップが判断しやすいような説明を心がけています。専門用語を並べて、しっかりとした理解を得られずに承諾を得るようでは駄目です

・ 良くないことほど、早く事実を伝えるように努めています

◆ ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・ユーザー企業の抱えている経営課題や情報システムについての問題をよく理解して、適切な提案をタイムリーにしてほしい。一般論ですが、新しいパッケージを作ったら、それをやみくもに売ろうとするITベンダーもいますが、それでは困ります

・自社の情報システムに関するリクエストを出したら、できるだけスピード感を持ってそれに応えてくれると嬉しい

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経コンピュータ
・日経SYSTEMS

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
・ITpro
・ITmedia
・CNET Japan

◆ストレス解消法
・休日はとにかく身体を休めることです。普段は忙しくて家族との会話が少ないため、休日は仕事のことは考えずに家族と一緒に出かけ、会話を増やすようにしています