総務相の諮問機関である情報通信審議会(情通審)は3月27日,NGN(次世代ネットワーク)の接続ルールとして導入を検討していた「光ファイバの1分岐単位の貸し出し」を見送ると答申した。一方,2008年度以降の光ファイバ接続料については,NTT東西地域会社にさらなる値下げを求めた。

 光ファイバの1分岐貸しについては,(1)NTT東西を含めた全事業者で設備を共用する方法(共用型)と,(2)各事業者が設備を専有する方法(専有型)の二つを検討していた(図1)。

図1●光ファイバの1分岐貸し議論と2008年度以降の接続料について総務相の諮問機関「情報通信審議会」が下した結論
図1●光ファイバの1分岐貸し議論と2008年度以降の接続料について総務相の諮問機関「情報通信審議会」が下した結論
1分岐貸しの義務化は見送り,接続料の値下げでFTTH市場の競争促進を図る考えである。

 このうち(1)の共用型は,新サービスの提供やサービス品質に支障が出るとしてNTT東西が拒否していた。NTT東西と設備競争を展開する電力系事業者やCATV事業者まで反対していることもあり,情通審は「現時点で必要不可欠とまでは言えない」と結論を出した。

 対案として有力と見られていた(2)の専有型も,システムの改修に費用と時間がかかるうえ,「適切な料金水準を合理的に設定することは容易ではない」とした。つまり,今回の議論で1分岐貸しの導入は見送った。

 今の段階ではむしろ,光ファイバ接続料を値下げする方が「FTTH市場の競争を促進させる上で直接的な効果を期待できる」とする総務省の政策的要請を尊重した。

 これに伴い情通審は,NTT東西が1月に提出した光ファイバ接続料の認可申請を差し戻し,他事業者に貸し出すダーク・ファイバの需要予測を見直すことで,接続料水準を引き下げるよう要請した。その代わりとして情通審は,光ファイバ接続料の改定と同時に,接続料のコスト割れを回避する手段としてNTT東西が要望していた「かい離額調整制度」を「今回に限定した措置」として認める方針だ。NTT東西がコスト割れになった場合でも,徴収漏れの分をある程度回収できるようにする。具体的には費用予測と接続料収入の差分を,翌期と翌々期の2段階に分けて接続料原価に反映する。接続料水準が急激に変動する恐れがある場合は,かい離額をさらに複数の算定期間に分けて反映するといった緩和措置を考える。

競争の進展は当面,期待薄

 とはいえ,今回の措置によって接続料の大幅な値下げはあまり期待できない。需要予測の見直しに当たっては電力系事業者やCATV事業者への影響を配慮し,「接続料の低廉化で設備競争の進展に支障が出ないように留意すべき」としたからだ。見直し後も小幅な値下げで終わる可能性が高く,総務省の狙い通りにFTTH市場の競争が活発に進むとは考えにくい。

 競争が進むとすれば,NTT東西を除いた競争事業者同士で設備を共用して1分岐単位で利用できる仕組みを独自に構築した場合だろう。設備を共用すれば提供コストを軽減できるので,料金面でNTT東西のFTTHサービスに対抗できる芽が出てくる。情通審も「まずは競争事業者同士で設備共用の取り組みを積極的に進めることが適当」とした。

 ただ,ソフトバンクやKDDI,イー・アクセスは以前からNTT東西を除いた設備共用に反対しており,実現は微妙である。ソフトバンクは今回の決着に対し,「NTTの独占に拍車がかかる恐れがある。NTT東西のアクセス分離を含め,NTTグループの在り方の抜本的な見直しをすぐに実施すべき」とコメントしている。