複数のWebサイトで利用できる共通IDの認証技術「OpenID」の普及と推進を目指す組織が日本国内での設立に向けて動き出した。米国で2006年7月に発足したOpenID Foundationの日本支部という位置付けである。日本語で関連技術の情報を発信するほか,日本の法制度に合わせた仕様提案などを目指す。

 ユーザー登録をしていないWebサイトに,共通IDを使ってログイン可能にする認証技術「OpenID」を,国内で普及させることを目指す団体が2008年4月に発足する。OpenID関連技術の仕様策定,管理などを推進する米国のOpenID Foundation(OIDF)の日本支部として「OpenIDファウンデーション・ジャパン」(仮称)が,活動を開始する計画である。

 2月28日には,野村総合研究所,シックス・アパート,日本ベリサインの3社が設立発起人として,OpenIDの導入を検討する企業などにファウンデーションへの参加を呼びかけることを発表(写真1)。同時にヤフーやミクシィ,ライブドア,ニフティなど11社が参加を表明した(表1)。4月の正式発足時には,数十社規模で会員企業がそろう見通しだ。

写真1●OpenIDファウンデーション・ジャパンの設立発起人
写真1●OpenIDファウンデーション・ジャパンの設立発起人
左から発起人副代表の関信浩・シックス・アパート代表取締役,発起人代表の崎村夏彦・野村総合研究所上級研究員,米OpenID Foundation副会長のデビット・リコードン・米シックス・アパート オープンプラットフォーム技術部長,発起人副代表の石川和也・日本ベリサイン・リサーチ室長。

表1●OpenIDファウンデーション・ジャパンへの参加を表明した企業
OPはOpenIDの発行サービス,RPはOpenIDでログイン可能になるサービスである。
企業名 OpenIDへの対応状況
アセントネットワークス OP,RP
イーコンテクスト OP(検討中)
インフォテリア RP(予定)
テクノラティジャパン RP
ニフティ RP
ミクシィ OP(予定)
ヤフー OP
ライブドア OP
シックス・アパート OP,RP
日本ベリサイン OP(検討中)
野村総合研究所 特に予定なし

仕様に準拠して“認証の輪”に参加

 OpenIDは,OpenID発行サービス(OP:OpenID provider)と,OpenIDでのログインを許可するOpenID対応Webサイト(RP:relying party)が連携する。URL(uniform resource locator)形式で発行されるOpenIDを媒体に,OPがユーザーを認証した結果をRPに安全に伝えることによって,シングル・サインオン環境を実現している。

 すべてのIDを管理する中央集約型の認証サーバーが無くても,仕様に準拠したシステムさえ立ち上げれば,認証連携に参加できる。このため普及スピードが早いのが特徴だ。米国では既に1万サイトがOpenIDでのログインを可能にしており,発行実績は2億5000万IDを超すという。

 OIDFの日本支部は今後,日本語でのOpenID導入ガイド,ユーザー向けのヘルプ情報などを公開し,国内WebサイトでのOpenID採用を呼びかける。

 さらに,米国とは異なる日本の法制度に合わせた運用方法などを,OIDFの仕様作成の議論に反映させていく計画だ。具体的には,個人情報保護法や関連ガイドラインを尊重したOpenIDの運用方法を想定している。例えば,OPとRPの間でユーザーに関する情報を受け渡す際には,必ずユーザーに情報送信の確認を求めることなどが必要になると見ている。こうした運用規定をOpenIDの拡張仕様に盛り込むことを検討している。