図1●IBM System z10の特徴
図1●IBM System z10の特徴
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図2●国内のサーバー出荷金額推移
図2●国内のサーバー出荷金額推移
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 4.4GHz動作のクアッドコアCPUを搭載――。オープン系サーバーではない。IBMが2月26日に全世界で一斉に出荷を始めた新型メインフレーム「IBM System z10」の宣伝文句だ。IBMに限らず、メインフレームがCPUの動作周波数を喧伝するのはきわめて異例。このことからも、z10がオープン系サーバーに真っ向から勝負を挑むことがわかる。

 IBMはz10で、入出力(I/O)性能に比べて相対的に低かったCPUの性能を大幅に引き上げた。パイプラインの設計を変更するなどして、CPU当たりの処理性能は既存機種「System z9 EC」の1.5倍の920MIPSに高めた。搭載できる最大CPU数も54個から64個に増えたので、システム全体の処理性能は1.7倍になった。XMLなどの処理を高速化する専用プロセサも搭載した。米IBMでメインフレーム事業を統括するアン・アルトマン氏は「性能はIAサーバー1500台分。大型UNIXサーバーに勝るとも劣らない」と豪語する(図1)。

 「既存のCOBOL資産だけでなく、JavaやCで開発された新しいソフトも高速に動く」。日本IBMで渡邉彰メインフレーム事業部長は胸を張る。「これまでは大型UNIXサーバーで動かすことが多かったデリバティブ(金融派生商品)やサプライチェーンのシミュレーションといったCPUに負荷のかかるソフトも快適に動作する」と売り込む。

 IBMメインフレームは2000年発表の「z900」から、オープン系サーバーとしての性格を強めてきた。長年培ってきた信頼性や仮想化機能を背景に大型Linuxマシンとしての利用を呼びかけた。オープン系として使うときは、ハード価格を5割以上割り引くなどの優遇措置も用意した。だが、これまではUNIXサーバーの最上位機に比べるとCPU性能が低いことがネックとなって、開拓しきれない用途があったという。

 IBMはz10をオープン系サーバーの統合用などに拡販する。日本でも昨年4月に全社のメインフレーム技術者1000人弱を横断的に結ぶ仮想組織を設けるなど、技術者育成に継続的に取り組む姿勢を明らかにした。

 調査会社のIDC Japanによると、国内のメインフレームの出荷金額は約1500億円とサーバー全体の4分の1弱を占めるが、今後は急速に縮小が見込まれる(図2)。すでに欧米ではメインフレームの比率は1割を切った。オープン系の代替需要を獲得できないようだと、IBMといえどもメインフレームの生き残りは難しい。