国際ローミングの通話とデータ通信それぞれの料金体系を理解すると,通信料金を抑えるための注意点が見えてくる(図1)。実際には,これらのポイントを踏まえた上で端末に適切な設定を施すことで,国際ローミングの通信コストを大幅に節約できる。

図1●国際ローミングの通信コストを抑えるポイント
図1●国際ローミングの通信コストを抑えるポイント

 通話料の最大のポイントは,発信時も着信時も通話時間に応じて課金されること。この点はどの携帯電話事業者のサービスでも変わらない。特に注意したいのは電話を受けたときだ。事業者も「着信に課金されることは,最も理解してほしいことの一つ」(NTTドコモの隈崎守哉国際サービス部調査担当課長)と説明する。日本国内と同じ感覚でいると,知らないうちに着信通話料がかさむ。例えば中国にいるときに日本から着信し,10分間話したとする。ローミング先の事業者にもよるが,この間の着信通話料は700~1450円程度にもなる(図2)。長電話は禁物だ。

図2●ローミング料金の試算例
図2●ローミング料金の試算例

 ごく一部だがローミング先の事業者によっては,発信時に相手を呼び出しているだけで課金されることもある。相手が応答しなくても,一定の時間以上呼び出しを続けると課金対象になる。電話をかけて相手が応答しない場合,長い時間待ち続けるよりはいったん切り,時間を置いてかけ直す方がよさそうだ。

ソフトバンクはローミング事業者を選べる

 ソフトバンクモバイルの世界対応ケータイではローミング先の事業者によって通話料が異なるため,ローミング先を変更するだけで通話料を安くできることがある。実際には,地域ごとに通話料が安いローミング先の事業者を「第1事業者」,次を「第2事業者」として扱う。ユーザーが何も設定を変えなければ,「ローミング開始時には,端末が自動的に第1事業者を選ぶようになっている」(国際サービス部事業企画課の塚田達也担当課長)。

 とはいえ,端末の自動的な動作に任せきりで大丈夫とは言い切れない。例えば渡航先の国で,地域を移動するとしよう。第1事業者のカバー・エリア圏外に出ると,端末が自動的に第2事業者を選ぶようになっている。問題は,元の第1事業者のカバー・エリアに戻ったとき。端末の仕様などにより,再度自動的に第1事業者を選ぶとは限らないのだ。

 この点,手動でローミング先事業者を切り替えられるようにしておけば,操作は面倒になるが,常にその地域で一番料金が安い事業者を選択できる。通話料をできるだけ抑えたいなら,ローミング先の切り替え方をマスターしておくと良いだろう。

 手法としては別物だが,通話料を抑えるなら,日本の事業者の国際ローミングと渡航先の事業者のプリペイドSIMを併用する手もある。月1~2回の頻度で海外出張する伊藤忠商事の中原敏夫モバイル&ワイヤレス部モバイル&ワイヤレス課長は,「日本からの連絡は国際ローミングを利用して,現地の人からはその国・地域の事業者の番号にかけてもらう」という。現地事業者のSIMを使える端末(SIMロックフリー端末など)が別途必要になるものの,賢く使う方法の一つであることは間違いない。