携帯電話事業者の国際ローミング・サービスの充実振りが著しい。これまでは180カ国・地域で使えるなど先行していたソフトバンクモバイルに,NTTドコモとKDDIの2社が追従し始めた。国内のサービスと同様に,国際ローミングでも料金や端末でサービス競争が目立つようになってきた。現在提供中の国際ローミング・サービスは,NTTドコモの「WORLD WING」,KDDIの「グローバルパスポート」,ソフトバンクモバイルの「国際対応ケータイ」の3つ(図1)。さらにイー・モバイルも,今夏から国際ローミングを開始する予定だと発表している。このほかPHS事業者のウィルコムが,台湾とタイで国際ローミングを提供している。

図1●各社の国際ローミング・サービスの特徴
図1●各社の国際ローミング・サービスの特徴
通話とパソコンで通信する際の利用料の算出方法が,各社で異なる。3社とも日本国内の場合と料金体系が違う。
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 ドコモの最新機種905iのほとんどは,国際ローミングに対応している。また同社は3月1日,国際ローミングのパケット通信料金を一部改定。一部の特定事業者にローミングしてパソコンとスマートフォンからのパケット通信する場合は,1日を単位として一定量まで定額で使える料金体系を新設した。KDDIも,3月15日に国際ローミングのサービスをリニューアル。一部値下げを実施した。3月21日にはデータ通信を充実させ,新端末を発売している。

複雑な料金体系を読み解くのが活用のポイント

 ただ,国際ローミングをうまく使いこなすのは意外に難しい。定額あるいは一定通話分が無料といったメニューや割引が適用されないなど,どれも国内の通話/通信とは料金体系が全く違うからだ。特徴は,「通話は発信時のほか着信時にも課金される」,「国・地域によって料金が変わる」,「同じ国・地域でもローミング先の事業者によって料金が違う」,「携帯電話事業者によってデータ通信のメニューが異なる」といった点である。

 国際ローミングを使う場合,ユーザーは,国内で契約する携帯電話事業者が提携している海外事業者の網に接続する。料金やサービス・メニューは,日本の携帯電話事業者とローミング先の事業者が交渉して決める。渡航先の国・地域,ローミング先の事業者によって料金が違ってくるのはこのためだ。

 通信方式も日本国内とは違う場合がある。ソフトバンクモバイルの「世界対応ケータイ」とNTTドコモの「WORLD WING」は,W-CDMAまたはGSMを使う。通信方式はローミング先の事業者によって違うため,W-CDMAとGSMの両方に対応した端末を使う。

 これに対してKDDIの「グローバルパスポート」には,GSMとCDMAのメニューが別々にある。それぞれ,利用できる国・地域や料金体系だけでなく,対応端末も異なる。日本のCDMA2000 1xと海外のCDMAの組み合わせを使える端末は既にある。ほかに,CDMA1X WINとGSMの両方を使える端末も発売する予定である。

 いずれの場合も,各通信方式に対応した端末を持っていなければ,空港などで海外用端末を借りて,普段使う携帯電話機のSIMカードを差し替える方法もある。