データ通信を利用する際に重要なのは,「意図しない通信を回避すること」である。典型例はメールの自動受信。パケットまたはデータ量による従量課金になるため,メールの数量が増えればそれだけコストがかさむ。

「最低これだけかかる」という料金に注意

 基本的にパケット単位で課金される以上,通信するデータ量を減らすことは定石と言える。ただ国際ローミングでは,単純にデータ量を減らすだけでは十分とは言い切れない。

 気を付けたいのは一部のデータ通信で適用されるミニマム・チャージである。NTTドコモ,ソフトバンクモバイル,KDDIのどのサービスの場合も,ミニマム・チャージを課されるメニューがある(図1)。

図1●国際ローミングにおけるデータ通信料金
図1●国際ローミングにおけるデータ通信料金
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 ミニマム・チャージは「最初の50パケットまで50円」,「最初の10Kバイトまで100円」といったもので,データ量によらず1回50~150円が課金される。数Kバイト程度のメールを頻繁にやり取りすると,データ量が少なくても通信料が膨らんでしまう。例えばミニマム・チャージがあるサービス・メニューでメールを20回受信すると,最低でも1000~3000円かかる。これを最小限に抑えるには,メールを手動受信するなど通信をまとめると良い。

 一方,完全に従量制の料金体系を採るメニューでは,通信量が少なければ料金はそれほど高くはならない。例えばミニマム・チャージがないKDDIのグローバルパスポート CDMAのパケット料金は1パケット(128バイト)当たり0.35円。割引なしでも1パケット0.1~0.27円(KDDIの場合)という国内に比べれば確かに高いが,64文字のメールを20通受信したとしても,通信料は単純計算で7円程度だ。

 それでも,受信するメールにはスパム・メールも含まれるし,重要とは言えない容量の大きなファイルが添付されたメールもあるだろう。通信料を抑えるなら,それらへの課金を避けるべく,必要なメールだけをダウンロードするなどの工夫をしたい。

 海外でSMSまたはCメールを使う方法も覚えておくと便利だ。送受信できる文字数が限られるため簡単なやり取りにしか使えないが,どの事業者も受信は無料。海外で使いこなせると役に立つサービスである。

PCは意図せぬ大容量の通信をしがち

 パケット課金の影響は,携帯電話機よりも,パソコンで通信する場合の方が顕著に表れる。OSのアップデートやセキュリティ・ソフトのパターン・ファイルの自動更新など,定期的に大容量のデータをダウンロードするように設定されているケースが多いためである。

 パソコンで約1Mバイトのファイルをダウンロードする場合の通信料金は,例えばパケット料が世界一律になっているソフトバンクモバイルの場合で2000円程度。NTTドコモの場合は1600円程度になる。自動更新機能は,セキュリティの観点からはデフォルトで有効にしておくべきだが,海外で携帯電話のネットワークを利用しているときは手動実行に切り替えておく方が無難である。

 ソフトウエアの更新以上に意識しにくいのが,ウイルスやボットによる勝手な通信である。ポップアップ画面は表示されず,ユーザーは気付きにくい。少々面倒だが,自動的な通信による高額請求を避けるために,通信を終えたらデータ通信カードをパソコンから取り外す習慣をつけておくと安全である。

 ユーザーが意図的に通信する場合でも,「第3世代携帯電話など高速のサービスでは,短時間の通信でも金額が跳ね上がる可能性がある」(NTTドコモの三嶋俊一郎スマートフォンセンターディレクター)。通話の場合に長電話を避けるのと同様に,データ量が多くなりそうな通信を極力避ける工夫が欠かせない。

データ通信の新メニューに注目

 KDDIとNTTドコモがそれぞれ3月に提供を始めた新メニューもチェックしておくと良いだろう。使い方次第で通信料を抑えられる。

 NTTドコモは3月1日,パソコンとスマートフォンからの通信を対象にしたデータ通信に新しい料金体系を導入した。アジア地域の携帯事業者で結成した「コネクサス・モバイル・アライアンス」加盟事業者の一部など,特定のローミング先を対象に,一定の通信量まで定額で使えるというものだ。

 料金は1万パケットまでは従量制で1パケット当たり0.2円。その後12万パケットまで2000円のまま利用できる点が特徴。それ以上は1パケット0.2円の従量制となる(図2)。1日単位でこの料金を適用する。ノート・パソコンを持って出張に出るビジネス利用を念頭に置いており,「料金はホテルのブロードバンド利用料を意識している」(隈崎担当課長)。

図2●ドコモが3月に開始した一定量定額サービス
図2●ドコモが3月に開始した一定量定額サービス
ノート・パソコンでWebやメールを使う用途を想定。
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 KDDIはGSM方式を使う「グローバルパスポートGSM」のサービス内容を3月21日から拡充した。GSMは今まで通話だけの別サービスだったが,これを機にデータ通信も可能にした。課金体系は最初の50パケットまで50円のミニマム・チャージがかかり,50パケットを超える通信に対しては1パケット0.2円ずつ課金される。これに先立つ3月15日には「グローバルパスポートCDMA」のパケット料金を1パケット1.5円から0.35円に値下げ。この料金からすると,少量のデータ通信はCDMAの方が安く済み,通信量が増えるほどGSMが有利になる。

 CメールはCDMA版の場合受信だけが可能だが,GSM版では送受信とも可能という違いもある。それぞれでサービス提供地域に違いはあるが,両方のサービスを受けられる地域では,料金と通信速度の違いを勘案してCDMAとGSMを選択できる。