写真1●東京・目黒の運用センターの様子。シンガポールにも同様の施設を構えている(撮影:後藤究)
写真1●東京・目黒の運用センターの様子。シンガポールにも同様の施設を構えている(撮影:後藤究)
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 新生銀行は2008年2月、日本で稼働する基幹系システムの運用センターをシンガポールに開設した。ネットワークを経由して、システムの動作監視やオペレーション操作を担当させる。佐藤芳和執行役システム企画部長は、「東京・目黒にある既存の運用センターと同レベルの業務ができるようにしてある」と説明する。

 シンガポールの運用センターはバックアップという位置付けではない。月曜日は東京、火曜日はシンガポールといった具合に2つの拠点を併用していく考えだ(写真1)。

 どうしてシンガポールに運用センターを設けたのか。佐藤執行役は、「英語ができるインターナショナルな人材を確保したいから」と答える。新生銀行は邦銀ながら、英語の活用にこだわっている。海外製のソフトウエアは基本的に日本語版でなく英語版を使う。Windowsはもちろん、印i-flexソリューションズの「FLEXCUBE」などもそうだ。「最新版が出るのもバグ対応も英語版が先」(佐藤執行役)なので、少しでもアドバンテージを生かしたいと考えているのだ。

 英語版は画面表記も当然英語。となると、運用要員も英語が分かることが条件になる。ならば東京よりもシンガポールがいいと結論付けた。技術者の人件費は東京と変わらないという。日本との時差が1時間しかないのも、トラブルの時などリアルタイムのコミュニケーションが不可欠な運用業務を任せるのに適していると考えた。

開発、保守はインド・プネで

写真2●東京・目黒の開発センターには、多数のインド人が働いている(撮影:後藤究)
写真2●東京・目黒の開発センターには、多数のインド人が働いている(撮影:後藤究)
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 要員の大幅な増減が不要な運用業務と異なり、開発、保守は機動的なリソースの調達が不可欠だ。そこで、開発、保守拠点はインドを選んだ。西部の大都市ムンバイから南東に100キロ強のところにある「プネ」に、120人の専任要員を確保している。

 東京の開発拠点にも、海外から技術者をオンサイトで呼び寄せている(写真2)。インド・ベンダーの技術者を中心に集結させて、案件の増減に対応できる開発チームを構成している。

 自前の拠点ではないが、2006年からはフィリピンの活用も始めている。フィリピン最大財閥系で、首都マニラに本拠を構えるアヤラ・システムズ・テクノロジー(ASTI)と、セブにあるアライアンス・ソフトウエアの2社を使い、すでに合計100人規模の技術者を調達している。オープンソース・ソフトウエア(OSS)を使った案件などを任せているのだ。

 さらに今後は、中国やベトナムなどへの発注を計画中だ。新生銀行はアジアの技術者のパワーを自社の競争力につなげていく。