写真1●住友電工情報システムの白井清志社長
写真1●住友電工情報システムの白井清志社長
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写真2●中国・大連の現地法人、住電軟件(大連)の開発現場
写真2●中国・大連の現地法人、住電軟件(大連)の開発現場
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写真3●住電軟件(大連)の伊藤保副総経理
写真3●住電軟件(大連)の伊藤保副総経理
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 中国とインド、フィリピンに自前の開発拠点を設け、目的に応じて技術者を使い分ける--。このようなグローバル・ソーシング戦略を採っているのが住友電装だ。

 3カ国のリソースの具体的な役割分担は、海外拠点で使うシステムの開発・保守がインド、日本で利用するシステムの開発、保守が中国、CAD関連の案件がフィリピンである。技術者数は、インドが110人、中国が50人、フィリピンは35人だ。合計で約200人に達する要員は、グループのシステム子会社などを通じて、現地で直接雇用している。

 住友電装のシステム関連会社、住友電工情報システムの白井清志社長は、「開発工数ベースで、年間の開発案件の30%を海外に委託している」と説明する(写真1)。

 住友電装がグローバル・ソーシングを推進するのは、自前主義を貫くためだ。というのも、同社の生産管理システムは、基本的にすべて自作だ。「苦労はあるが、それが競争力につながっている」(白井社長)。しかも同社は、世界30カ国に進出しているグローバル企業。自前の技術者を世界規模で確保するのが不可欠なのだ。

国内要員の空洞化を防ぐ取り組みも

 同社が海外で自前の技術者を確保し始めたのは2000年のこと。自動車メーカーの世界進出に伴うハーネス事業のグローバル展開戦略の一貫だ。インドの現地生産パートナと共同で、デリー近郊に開発拠点を設けた。

 2002年には、ハーネスの設計・エンジニアリング向けCADシステムの開発会社をフィリピンに設立。CADシステムを100台設置し、世界中のCADシステムの利用支援・オペレーションなどを担当させている。「フィリピンは英語が話せる人材が多くCADに強い技術者も豊富な点に目を付けた」(白井社長)。

 その後、本業での中国展開の拡大に伴い、中国の上海と大連にも開発拠点を新設した(写真2)。中国・大連の現地法人、住電軟件(大連)の伊藤保副総経理は、「40人の技術者全員が日本語を読める。そのうち日本と行き来する13人のSEは、ほとんどが日本語で会話もできる」と説明する(写真3)。

 海外リソースの積極活用と同時に、国内要員の空洞化を防ぐ努力も続けている。すべての開発、保守を海外に委託すると、「国内要員は外注の管理や予算の調整といった仕事ばかりになってしまい、技術力が低下する」(白井社長)。システム関連会社の技術者はもちろん、住友電装本体のIT部員には、配属後しばらくは必ずプログラミングを経験させるなどの取り組みを徹底している。さらに、国内のIT部員をインドに送り込み現地で英語とITの研修も受けさせている。

 白井社長は「国内要員の技術力の維持・向上と、グローバルでのリソース活用の両立を図っていきたい」と意気込む。