2008年3月中国広州で行われたアジアOSSカンファレンス
2008年3月中国広州で行われたアジアOSSカンファレンス
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2003年タイで行われた第1回アジアOSSカンファレンス
2003年タイで行われた第1回アジアOSSカンファレンス
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アジア各国のオープンソース・ソフトウエア推進組織(財団法人 国際情報化協力センターの資料)
アジア各国のオープンソース・ソフトウエア推進組織(財団法人 国際情報化協力センターの資料)
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 日本が2003年からアジアの各国政府と開催しているオープンソース振興イベント「アジアOSSカンファレンス」。2003年3月にタイのプーケットで第1回が開催されてから,以降マレーシア,インドネシア,ベトナムなどで行われ,2008年3月に中国の広州で第10回が開催された(関連記事)。

 アジアOSSは日本の発案により経済産業省の施策として始まった。2003年の時点で「アジア各国でオープンソース・ソフトウエアはほとんど認知されていなかった」と,経済産業省の委託を受けアジアOSSカンファレンスを実行している財団法人国際情報化協力センター 大木一浩氏は当時を振り返る。

 会議の場では「オープンソース・ソフトウエアも商用ソフトウエアも値段は変わらない」という発言も出た。そのころアジアの多くの国ではネットワークが未整備で,オープンソース・ソフトウエアをCD-ROMで入手していた。その一方で,商用ソフトウエアも海賊版がCD-ROMで売られており,Linuxディストリビューションを収録したCD-ROMと値段が変わらなかったのだ。

 だがこの5年の間に,各国政府によるオープンソース政策は大きく進展した。日本,中国,韓国,タイ,マレーシア,インドネシア,インド,パキスタン,スリランカ,カンボジアに,5年前にはなかった政府によるオープンソース・ソフトウエア・センターが設置された。ベトナムでは2004年「OSSマスタープラン」がスタート,インドネシアでは2004年7月から「Indonesia, Goes Open Source」政策が開始されている。ミャンマーでは2006年からのICTマスター・プランに,オープンソースのアクション・プランが盛り込まれている。またほとんどの国に,政府またはNGO(非政府組織)のオープンソース推進団体が設立されている(関連記事)。

 アジアOSSカンファレンスでは,各国の政府高官がスピーチに登壇する。「カンファレンスで行われた政策や政府調達に関する情報交換は日本を含めた各国政府の政策に刺激を与えた」と,Webサイト「オープンソースと政府」を開設した三菱総合研究所の比屋根一雄氏は言う。

 アジアOSSカンファレンスは経産省の事業として,日本の予算で開催されてきた。だが,オープンソースの啓蒙という目的は達したとして,経産省の事業としては2007年度で終了した。当初,日本の関係者は2007年度を最後に「アジアOSSカンファレンス」というイベント自体も終了すると考えていた。しかし,経産省としての事業が終了したことをアジア各国の担当者に報告すると,彼らから,アジア各国が主体となってアジアOSSカンファレンスを継続したいという要望が出てきた。「Asia OSS」は,彼らにとって終了させるには惜しいブランドに育っていたのだ。結局,フィリピン,インド,タイが中心メンバーとなり,2008年10月にフィリピンで次回のアジアOSSカンファレンスが開催されることとなった。

 またインドネシアでは,産官学のオープンソース推進組織POSS(Pendayagunaan Open Source Software)などにより,アジア・アフリカOSSカンファレンスが企画されている(関連記事)。2008年11月に開催の予定だ。

 予算が終了したあとも自律的に回り続ける政策は近年そう多くない。継続して開催されるだけでなく,アジアからアフリカへ拡大していくというのは,希有な例と言える。スポンサー探しなど課題もあるようだが,オープンソースという全世界が共有できるインフラのもとで,国際的な交流が拡大することを期待したい。