イー・モバイルが3月28日,音声サービスを開始する。通話に対応した新端末と料金プランを投入し,月980円のオプションで同社ユーザー同士の通話を24時間定額にする。24時間定額は,他の携帯電話事業者も法人向けに提供を始めると発表。国内の携帯4社が勢ぞろいする。

 昨年のサービス開始以来,データ通信に特化してきたイー・モバイルが,音声にも乗り出す。「既存の携帯事業者とは逆に,モバイル・ブロードバンドのサービスをベースに電話サービスを加える」(千本倖生代表取締役会長兼CEO)。

 既存の携帯電話事業者のサービスは高速データ通信だけを使う場合も電話の基本料が発生し,料金体系も複雑。こう分析したイー・モバイルは,「通話の基本料0円」,「月980円のオプションで24時間定額」,「データ通信との2回線持ちで音声側は基本料なし」といったコンセプトの音声サービスの提供に踏み切った。

電話基本料ゼロのプランを新設

 イー・モバイルはサービス開始に合わせて,通話とデータ通信ができる新端末2機種を投入する。東芝製の「H11T」と台湾HTC製のスマートフォン「S11HT」(通称EMONSTER)だ(写真1)。

写真1●音声サービス用の新端末   写真1●音声サービス用の新端末
写真1●音声サービス用の新端末
左が台湾HTCの「S11HT」,右は東芝の「H11T」(写真:小久保 松直)。
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 通話に対応する料金プラン「ケータイプラン」も新設した(表1)。基本料は月額1000円で,データ通信に関しては月間2万3825パケットまで追加料金なしで利用できる。通話には基本料はかからない。

表1●イー・モバイルで利用できるサービスと料金プラン
音声端末もデータ通信を利用できる。
  データ通信[カード全機種/EM・ONE(α)] H11T(東芝製) S11HT(台湾HTC製)
データ通信 ○(EMnet*1が必須) ○(携帯メールを使う場合はEMnet*1を利用)○
通話 ×
国内ローミング*2 × ×
利用できる料金プラン データプラン,ギガデータプラン,ライトデータプラン,スーパーライトデータプラン ケータイプラン ケータイプラン
*1 イー・モバイルが提供するISPサービス。月額315円。
*2 オプションでNTTドコモのネットワークを使える。料金は月額105円+従量課金。

 通信料は通話もデータ通信も基本的に従量課金。ただ,通話に関しては「定額パック24」という月額980円のオプションを契約すれば,同社ユーザー同士の通話が24時間定額になる。データ通信料は上限があり,2年契約ならどれだけ使っても4980円である。

 既存のデータ通信カード・ユーザーが2回線めにケータイプランを契約する場合は料金割引を適用。ケータイプランのデータ通信料を1000円安くする。2年契約にすれば基本料が無料になる格好だ(図1)。

図1●音声通話対応の「ケータイプラン」の料金
図1●音声通話対応の「ケータイプラン」の料金
24時間定額,国内ローミングなどはオプション。データ通信カードと合わせて2回線持つと割引が適用される。図はどちらも2年契約の場合。
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出そろう法人向けの「24時間定額」

 定額パック24では,法人と個人にかかわらずイー・モバイルのユーザー同士の通話は無料になる。ただし,同一事業者のユーザー同士の通話が24時間定額になる法人向けのオプションを,ほかの携帯3社も続々と開始,あるいは開始を表明している。「24時間定額が普通」という世界が目前に迫りつつあり,他の携帯電話事業者との差異化は難しい。

 例えば2~10人での通話が定額になる法人向けオプションとして,KDDIが「法人割+誰でも割」を,ソフトバンクモバイルは「ホワイト法人24」を3月から提供中だ。NTTドコモも2月27日に「オフィス割MAX50」のサービス改訂を発表し,6月から24時間定額に乗り出す(表2)。11人以上のユーザーで使える24時間定額メニューも,6月にドコモの「法人向けグループ内音声定額(仮称)」とソフトバンクモバイルの「ホワイト法人24+」が始まれば,4社のそろい踏みとなる。

表2●社員同士の通話を24時間定額にできる携帯電話サービス
イー・モバイル以外は,少人数で使える法人向けサービスを記載した。
  イー・モバイル「定額パック24」 KDDI「法人割+誰でも割」 NTTドコモ「オフィス割MAX50」(6月1日から) ソフトバンクモバイル「ホワイト法人24」
基本料金 1000円*1 980円*3 1050円*4 980円*5
必須のオプション料金 980円 なし なし なし
無料になる対象 イー・モバイル携帯電話同士 同一法人名義で,同じグループに属するau携帯電話同士。1グループは2~10回線 同一法人名義で,同じグループに属するドコモ携帯電話同士。1グループは2~10回線 同一法人名義で,同じグループに属するソフトバンク携帯同士。1グループは2~10回線
無料になる条件 「定額パック24」に加入し,発信者が同社エリア内にいること 「法人割」と「誰でも割」を2年契約する 「オフィス割」に加入し,「オフィス割MAX50」を適用する 法人が同一名義でホワイトプランを契約すること
対象外となる通話料 携帯/PHS:30秒9.45円*2,固定/IP電話:30秒5.25円*2 30秒21円*3 30秒21円*4 ソフトバンク携帯あて:1時~21時は無料,21時~1時は30秒21円,ソフトバンク携帯以外:30秒21円
*1 ケータイプラン。2年契約の場合。 *2 イー・モバイルのエリアから発信する場合。 *3 「法人限定auウェルカムキャンペーン」適用の場合(5月31日まで)。1050円分の通話料を含む。 *4 タイプSSバリューの場合。1050円分の通話料を含む。 *5 ホワイトプランの場合。

 この中で,イー・モバイルが優位な点は,定額対象外となる国内あて通話が安価なことだろう。定額パック24を適用すると,定額対象外でも携帯/PHSあてが30秒9.45円,固定/IP電話あてが同5.25円になる。

 これを上回るメリットは,やはりデータ通信料にある。ケータイプランはどれだけ使ってもデータ通信料に上限があるうえ,音声端末にパソコンを接続してデータ通信しても料金は変わらない。いわゆる「PC定額」を兼ねているのだ。

エリアは国内ローミングでカバー

 ただし,イー・モバイルのサービス提供エリアはどうしても他社よりも見劣りする。

 同社サービスの人口カバー率は,今年6月末で75%になる見込み。都市部については,地下鉄構内のエリア化を順次進めており,1年くらいで整備できるとの見通しを示している。一方で,地方は都市部ほどエリア拡大が進んでいない。

 そこで同社は,地方ではNTTドコモへの国内ローミング・サービスを提供することにした。これで自社エリアと合わせて95%の人口カバー率を達成する計画である。ただし,国内ローミングは別途オプションの申し込みが必要で,端末もH11T限定だ。さらに,ドコモへローミングしている際の通話料とデータ通信料はイー・モバイルのエリア内と異なり,通話が30秒ごとに22.05円など高くなる。