次に,NGNを機能の側面から見てみよう。NGNが満たすべき機能は,ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)の国際標準「Yシリーズ」で決められている。その中では,IPパケットをやり取りする機能を「トランスポート・ストラタム」,トランスポート・ストラタムを制御したりサービスを提供したりする機能を「サービス・ストラタム」と呼ぶ。さらにサービス・ストラタムに相当する部分は,「IMS」というアーキテクチャとして定義している(図3)。

図3●NGNの標準アーキテクチャと対応製品
図3●NGNの標準アーキテクチャと対応製品
ITU-T勧告「Y.2021」が規定したNGNのアーキテクチャと,その機能を提供する製品例を示した。NTTのNGNは,このY.2021などの国際標準に準拠する形で構築されている。
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 ネットワーク製品を提供するベンダーは,ITUの国際標準に準拠した製品をNGN向けに提供している。NTT東西が採用する具体的な製品名はほとんど公開されていないが,基本的には標準仕様準拠の製品を採用していると推測できる。したがって,ベンダーが様々な通信事業者に向けて提供している一般のNGN用製品から,具体的な姿を探ることができるだろう。

 ITU標準として決められたNGNのサービス制御を実現するサーバー製品としては,NECの「NC9000」や「NC5000」が代表例に挙げられる。NC9000はCSCFサーバーやHSSといった機能を実現するソフトウエア。NC5000は,QoSを実現するRACFサーバーと,アドレス割り当てや回線認証を実現するNACFサーバーである。これらのソフトウエアは通常,それぞれ独立したサーバー・マシンで動作する。

 図3のIPトランスポートを構成するルーター製品例としては,富士通と米シスコが共同で提供するNGN向けコア・ルーター「CRS-1」や「XR12400」がある。これらは,もともとISPのバックボーン向けに米シスコが開発した高速・大容量ルーターをNGNの標準仕様に合わせて作った製品である。

 IPエッジについては,NTTが公式に採用を表明した,シスコの「ASR 1000」が挙げられる。RACFサーバーと通信するためのインタフェースを備え,認証に基づくアクセス制御や動的QoS制御の機能を持つ装置である。

 ユーザー宅に置くホームEゲートウエイ(HGW)は,基本機能としてブロードバンド・ルーターとVoIPアダプタ,そしてCSCFサーバーと通信するための「SIP-UA」(UAはuser agent)を搭載する。サービス開始当初は,ひかり電話用に配布している端末装置(ひかり電話対応機器)のファームウエア・アップデートにより,SIP-UA機能を追加することで対応する。

 また,日立製作所や三菱電機などのベンダーは,さらに次の世代のホーム・ゲートウエイの開発を進めている。その目玉の機能としては,家電を制御するアプリケーションを動的に追加するプラットフォーム「OSGi」がある。

NGNの新サービスを実現する「SDP」

 スタート時点のNGNのサービス・メニューのうち,NGNならではのサービスは高品質の電話やテレビ電話,映像配信といった程度で,まだ少数にとどまっている。ただ将来的には,外部のサービス事業者がNGNの機能を利用した新しいアプリケーション・サービスを提供すると期待されている。その基盤になるのが「SDP」である。

 認証によるアクセス制御や通信ごとの動的QoSなどのNGNの機能は,SNI,UNI,NNIの3種類のインタフェースを経由し,外部からSIPによって利用できるようになっている。SIPはHTTPをベースにした自由度の高いプロトコルだが,これまで主に通信事業者が利用してきた。一般のサービス事業者はSIPを使ったサービス開発に不慣れだという問題がある。

 そこでNECや沖電気工業(OKI),米ヒューレット・パッカードといったプラットフォーム・ベンダーは,NGNのサービス開発を容易にするソフトウエア製品群を提供している(図A)。SIPを使わずに開発できるように,一般のサービス事業者が開発しやすいWebベースのインタフェースを用意する。

図A●NGNを利用したサービス開発を促進するSDP
図A●NGNを利用したサービス開発を促進するSDP