◆今回の注目NEWS◆

◎Google、Webで医療情報を管理できる「Google Health」の詳細を発表(ITpro、2月29日)

【ニュースの概要】米Googleはオンライン医療情報管理サービス「Google Health」の詳細について発表した。このサービスでは、ユーザーがオンラインで自分の医療情報を収集、保存、管理できるようになる。


◆このNEWSのツボ◆

 Googleがついに医療分野にも進出した。病院や医療サービス機関と連携して、ユーザーが自主的にカルテや検査結果などの医療データを取り寄せたり、他の医療機関と共有したり転送したりできるようにするとのことである。

 Google Earth をはじめて見た時も、「スゴイ!!」とショックを受けたが、今回のニュースは別の意味でショックを受けた。

 医療の情報化が叫ばれ始めたのは、それこそ20年以上前の話なのだが、私たちが病院に行ったりしても、「情報化で便利になったな」と思うことは多くない。確かに、診断を受ける時に先生は、パソコンをのぞき込んで、今までのカルテを参照したりしているようだし、次回の診療の予約や薬局への処方箋の発行は、そこからLANを経由してワンタッチでできるようだが、患者である私たちは別に便利でもなんでもない。転院したとき、今までの診療記録が電子データで受け渡しされているか…というと、そういうこともないようだし、依然として、「最初の検査から手続きする」という状況は変わってない。

 筆者が霞ヶ関でIT行政に携わっていた頃から、電子カルテ化や遠隔医療など、医療のIT化の可能性は無限であるかのような話が溢れていた。しかし、実際にはレセプトの電子化がようやく行われた程度であって、患者の私たちが利便性を感じる機会はほとんどないというのが正直なところである。

 なぜこんなことになるのだろうか?筆者は医療の専門家ではないのでよく分からないが、どうも老舗の病院やら、医療情報システムを提供するベンダー側のメンツや主導権争いなどがあり、結果として病院ごと、ベンダーごとの仕様が氾濫しているというのが実態のようだ。おかげで、例えば二つの病院が、それぞれ最新の医療情報システムを導入していたとしても、私たちは、その病院間で転院する時でも、カルテデータを持っていくこともできなければ、X線写真も放射線を浴びながら同じ部位を何度も撮影することになってしまう…。

 こうした状況下にGoogleの殴り込みである。Google標準のカルテや検査シート、処方箋などが出来上がり、それに対応できない病院は時代遅れ…などということにならなければよいのだが…。何となく、汎用機時代には世界的にも先進と言えた日本の企業情報システムが、オープン化、インターネットの時代に遅れをとった事態の再現…ということになりそうな気もする。そうならなければよいのだが…。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。