江崎グリコでCIOを務める吉田安矩・常務取締役SCM本部長資材部長兼情報システム部長
江崎グリコでCIOを務める吉田安矩・常務取締役SCM本部長資材部長兼情報システム部長

 創業から90年近い、菓子業界の老舗・江崎グリコ。その同社が2007年1月にSCM本部を設立し、サプライチェーンの全体最適化をさらに進めている。このSCM本部や情報システム部、資材部を率いるCIO(最高情報責任者)が、吉田安矩常務取締役SCM本部長 資材部長 兼 情報システム部長だ。

 このSCM本部や情報システム部長、資材部を率いるCIO(最高情報責任者)が、吉田安矩常務取締役SCM本部長 資材部長 兼 情報システム部長だ。2008年春で入社46年目、67歳になる。製造技術部長、工務部長、取締役製造部長などを経て、2002年に取締役情報システム部長に就きCIOとなった。2007年1月から現職を務めている。

 CIOに就いた年の翌年、2003年には生販システムを導入。生産計画は月次から週次になった。製品在庫の削減に成功し、菓子の「プリッツ」は2000年に15日分だった在庫が、11日分まで削減された。

 吉田常務が目指す究極のサプライチェーン・マネジメント(SCM)は、大量生産と同等の価格で、個人別の商品やサービスを提供できる「マスカスタマイゼーション」の実現だという。「マスなのにカスタマイズという、生産性と多様性の両立を実現させたい。足して2で割るような全体最適ではなく究極のSCMが理想」と話す。

 「無理だとあきらめるのは現状の技術水準に甘んじているから」という信念はエンジニアとして生産改革を指揮した経験に基づいている。現状の技術で改革が不可能ならば、新しい技術を生み出せ、というわけだ。門外漢である営業もIT(情報技術)で支援したい。営業とシステムの社員を集めてプロジェクトチームも作った。「地方の支店も含めた現場の声を聞きながらシステム化を進める」。老舗菓子メーカーのCIOは改革に燃えている。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・基幹システムは導入してから長い年月がたっており、業務のスピード向上を支援するためオープン系のシステムに移行することが急務になっています。グループ企業全体を見すえたシステムを新たに構築しなければいけません。

・そのために、グリコグループ全体の将来像をどのようにイメージするのか、グリコが成長し永続するためにはどのような情報システムが必要になるのか、経営トップと意思を統一しておく必要があります。そこで、企業経営を効率よく運営するために、情報システムをどのように活用するか、トップと認識を共有できるよう常日ごろから心がけています。コミュニケーションは、経営会議の場だけでなく、日常の会話でも頻繁に行い、情報システムの大切さを説き、ご理解を深めていただけるように働きかけています。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・朝日新聞
・日経情報ストラテジー

◆お勧めの本
最近読んだのは
・『経営者の条件』(P.F.ドラッカー著、ダイヤモンド社)

以下は古い本ですが、社員に読むように勧めています。
・『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎著、中央公論社)
・『組織の盛衰―何が企業の命運を決めるのか』(堺屋太一著、PHP研究所)
・『マス・カスタマイゼーション革命―リエンジニアリングが目指す革新的経営』(ジョー・パイン著、日本能率協会マネジメントセンター)

◆ストレス解消法
・名所・旧跡巡り
・ドライブ
・考えごとを整理するつもりで、パソコンに向かい、思いつくままにいろいろな思いを書き綴っています。

■変更履歴
Profile of CIOで,当初「情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など」という項目がありましたが,吉田安矩 常務取締役の発言とは無関係なものでした。深くお詫びし、削除いたします。本文は修正済みです。(ITpro編集部) [2008/03/25 13:30]