【問題】
 あなたは,Windows Server 2008のドメイン・コントローラに対して,権威ある復元(authoritative restore)を実行できるように,あらかじめシステム状態(System State)のバックアップを作成しようとしている。システム状態のバックアップを作成する方法は,次のうちのどれか。適切なものを選択しなさい。

A. Windows Serverバックアップを使い[システム回復を有効にする]オプションを有効にして作成する
B. Windows Serverバックアップを使い[システム回復を有効にする]オプションを無効にして作成する
C. 「WBadmin」コマンドで作成する
D. 「NTDSUTIL」コマンドで作成する

正解:C

【解説】
 Windows Server 2003付属のバックアップ・ユーティリティでは,ローカル・コンピュータのシステム状態のバックアップを作成し,それをリストアすることが可能であった。しかしWindows Server 2008付属の「Windows Serverバックアップ」では,システム状態のバックアップを作成できない。よって選択肢AとBは誤りである。

 なお,選択肢にあるWindows Serverバックアップの[システム回復を有効にする]オプションの働きは,バックアップにWindowsのシステムがインストールされているディスクを含むか否かの違いでしかなく,システム状態とは無関係である(図1)。

図1●[ システム回復を有効にする]を選択してもシステム状態はバックアップされない
図1●[ システム回復を有効にする]を選択してもシステム状態はバックアップされない
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 Windows Server 2008でシステム状態のバックアップを作成するには,「WBadmin.exe」コマンドを利用する。よって正解はCである。

 WBadmin.exeコマンドは,GUIのWindows Serverバックアップに対するCUI版と捉えられがちであるが,システム状態のバックアップを作成できるなどGUI版にはない機能が搭載されている。ただし,バックアップしたシステム状態の保存先は,ローカル・ディスクだけであり,DVDやネットワーク上の共有フォルダなどはサポートされない(リストアする際には,保存先にネットワーク共有パスを指定して戻すことが可能である)。

 また,WBadmin.exeコマンドにスケジュールを設定する機能はあるが,システム状態のバックアップに対しては機能しないので,スケジュール管理化でシステム状態のバックアップを実現したい場合には,別途「at.exe」コマンドなどと組み合わせて利用することになる。

 システム状態のバックアップおよびリストアする際には,ユーザーの権利としてAdministratorsグループまたはBackup Operatorsグループのメンバであるユーザーでなればならない。

 WBadmin.exeコマンドで作成したシステム状態のバックアップは,同じくWBadmin.exeコマンドで復元することができるが,その際には従来通りディレクトリ・サービス復元モードで起動した状態でおこなう必要がある。Active Directory Domain Serviceを停止した状態では復元できなので注意すること(図2)。

図2●システム状態の復元は,ディレクトリ・サービス復元モードで行う
図2●システム状態の復元は,ディレクトリ・サービス復元モードで行う
Active Directory Domain Serviceを停止した状態で,システム状態を復元しようとしたところ,[ディレクトリ サービス回復モード]での起動を促すメッセージが表示される。
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  以下にシステム状態のバックアップを作成するコマンドの使い方を紹介しておく。

・システム状態をローカルD:に作成する

Wbadmin start systemstatebackup -backuptarget:D:

・バックアップされているシステム状態のバージョン番号を表示する。復元時に,このバージョン番号を指定して復元する(図3

Wbadmin get versions

図3●バックアップしたシステム状態のバージョンを調べる
図3●バックアップしたシステム状態のバージョンを調べる
システム状態のリストア時には[バージョン識別子]の値を指定する
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・「D:」に保存されているシステム状態を「E:\NTDS」フォルダ(代替の場所)に回復する

wbadmin start systemstaterecovery -version:02/17/2008-01:42
-backupTarget:d: -recoveryTarget:e:\ntds

・「D:」に保存されているシステム状態を元の場所に回復する(この場合,ディレクトリ サービス復元モードで起動している必要がある)

wbadmin start systemstaterecovery -version:02/17/2008-01:42
-backupTarget:d:

 「NTDSUTIL」コマンドは,「Files」サブコマンドを使うことで,ディレクトリ・サービスのデータベース・ファイルやログ・ファイルの操作(保存先パスの変更やオフライン・デフラグの実行)ができるが,システム状態のバックアップを取ることはできない。

 またIFMサブコマンドを使うことで,IFM(Install from Media=メディアから追加DCをインストールする手法)用のデータを作成できるが,これはシステム状態のバックアップではない。よって選択肢Dは誤りである。

 なお,システム状態のバックアップをIFM用のデータとして利用することは可能であるが,IFM用以外のデータも含まれているため,セキュリティ・リスクの面などからIFM用にシステム状態のバックアップを使用することは推奨できない。