写真1●オムロンの樋口英雄 執行役員常務事業プロセス革新本部長
写真1●オムロンの樋口英雄 執行役員常務事業プロセス革新本部長
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 オムロンは2006年から、システムの稼働率や生産性、品質、開発スピードを世界規模で向上させる5カ年計画「IT構造改革」をスタートさせている。樋口英雄 執行役員 常務 事業プロセス革新本部長は、「事業のグローバル化をITの面から支援するのが狙いだ」と説明する(写真1)。その目玉が、中国をはじめとする海外のITリソースの積極活用である。

 例えば、大阪のデータセンターで稼働するシステムの運用は、中国・深センから遠隔操作している。日本で使うシステムの開発と保守は、上海の拠点に任せている。一方、欧州拠点のシステムは南アフリカのヨハネスブルグから運用している。いずれも、IBMとのアウトソーシング契約に基づき、同社のグローバル・デリバリセンターを活用している。

日本IBMの反対を押し切って実現

写真2●中国・深センのIBMグローバル・デリバリセンターにおける運用業務の様子
写真2●中国・深センのIBMグローバル・デリバリセンターにおける運用業務の様子
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 IBMが深センに構えるデリバリセンターの運用ルームでは、机といすが横に25席、縦に4列並んでいる。正面の巨大スクリーンにはシステムの監視画面が表示されていて、20代とみられる若手技術者が、スクリーンと手元のパソコンを見ながら、キーボードをたたいている(写真2)。

 オムロンが大阪にあるサーバーの運用を深センに委託し始めたのは、この1月からだ。半年間の準備期間を経て、本格稼働にこぎつけた。オムロンは運用のほか、技術サポートにも深センのデリバリセンターのリソースを活用している。

 一方、上海にあるIBMのデリバリセンターには、日本国内で使うシステムの保守要員として50人を確保している。オムロンのシステム子会社、オムロンネットワークアプリケーションズ(ONA)の高田充康社長は、「90年代から日本IBMに委託していた100人分の保守業務を段階的に移管し、すでに5割強を中国に任せている」と説明する。

 オムロンの樋口常務は「初めて開発現場を視察した、その場で発注を決めた」と振り返る。2005年10月のことだ。日本IBMの担当者は「それは無理だ」と抵抗した。しかし、樋口常務は「製造業では開発や生産を中国に移してきた歴史がある。IT部門が中国のリソースを使えないはずはない」と押し切った。