フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄

まずはおわびから。諸般の事情により更新間隔が少し開いてしまったことをおわびする。イベント等があったためである。さて,長らくAsteriskとIP電話機を組み合わせて使う際に問題となっていた汎用的なライン・キー問題だが若干ではあるが解決の糸口が見えてきた。今回はこの話を中心に解説しよう。

 日本の内線電話機では当たり前の機能であるボタンを使った操作(ライン・キーを使った操作)が,Asteriskと汎用的なIP電話機の組み合わせでは実現が難しいという問題が存在する。この問題は日本独自のPBX文化に根ざしている。これが解決できないのは,米国を発祥とするAsteriskと日本の電話文化の違いであると筆者はこれまで述べてきた。とはいえ,実際には一部のAsterisk応用製品の中には,ライン・キー機能を実装しているものがあるの,なぜこれが使えないのか疑問に思われている方も少なくないだろう。

 ライン・キー(いわゆるボタン電話)機能を実装するには,電話機側の制御方法が分かっていなければならない。ところが,ライン・キー機能を持っている国内メーカー/ベンダーの電話機は,この制御方法が公開されていない。

 これらをAsteriskと組み合わせて使えるようにするためには,メーカー/ベンダーから電話機の情報を公開してもらわなければならない。だが,通常これは公開されることは少なく,公開してくれる場合であっても守秘義務契約や購入台数の担保などが必要とされる。そのため,オープンソースの範疇で実装するのは困難である。また,この制御方法はメーカー/ベンダーによって方法が異なっているため,標準的な実装方法が無いのが現状である。

 ということは,換言すれば電話機の制御方法が明らかで,方法を公開している電話機が存在すれば,Asteriskにそのライン・キーを操作する機能を実装することができることになる。

Asterisk“フレンドリー”なIP電話機メーカー

 最近,海外のIP電話機メーカーの中には,Asteriskに理解を示すところが多くなってきている。これは既に,Asteriskが無視できない“勢力”の一つであり,このマーケットに対して電話機を売ることにメリットがあるとメーカーが判断しているからだ。こうしたIP電話機メーカーとしては,Aastra,Grandstream,Snomといったメーカーの他,音声会議システムやビデオ会議システムで著名なポリコム,さらには携帯電話機メーカーのノキアまでもが挙げられる。

 特にポリコムは,最近Asteriskとより密接な関係を保っているように見える。Asterisk 1.6からはポリコム製電話機を自動設定(オートプロビジョニング)する機能が盛り込まれるようである。日本国内ではポリコムはどちらかといえば会議システムでの知名度が高く,オープンソース関連の展示会などで,筆者がポリコム製電話機を展示していると「ポリコムってあのポリコムですか?」といった驚きや,「ポリコムは電話機も作ってるんですか?」などの問いを受けることが多い。

 ライン・キーそのものではないが,AastraやGrandstream,Snomの電話機ではBLF(Busy Light Field)と呼ぶ機能により,パーク保留をランプ表示する機能はすでに実現できている。そのため,Asteriskでこの機能を使っているユーザは少なくない。

 これら海外の動向を,日本国内のメーカーやベンダーもぜひ気にしてもらいたい。というのも,今やオープンソース・ソフトウエアは,様々な側面で基幹業務やWebサービスに使われており,すでに無視できないどころか必須となっている感がある。Asteriskもいずれ日本国内でも無視できない勢力の一つになるだろう。そうなった時に,いざ電話機を探すと海外メーカーばかりということになってからでは手遅れなのである。