春は新しい仕事に出会うことも多い時期。順調なスタートを切るには客観的に自己評価して,足りない知識を埋めていきたいものだ。評価といえば検定である。ウェブ担当者なら一度は気にしたこともあるはず。ウェブ関連の検定試験について調べてみた。

ウェブに国家資格があった

 「ウェブデザイン技能検定」は,2007年4月新たに加わった技能検定の1種だ。技能検定とは厚生労働大臣が政令で定める職種ごとに実技試験と学科試験が行われる検定のこと。実技試験があるという点が特徴だ。

 1級の合格者には厚生労働大臣から合格証書がもらえて「ウェブデザイン技能士」と称することができる。本資格は医師や弁護士のような業務独占資格でなく名称独占資格なので,資格を持たないとウェブデザインができなくなる,というわけではない。2008年3月16日には3級の検定が初めて実施される。ちなみに技能検定全体ではこれまで296万人の技能士が誕生しているそうだ。

 試験業務はNPOのインターネットスキル認定普及協会が担当している。同協会の理事長は東京大学先端科学技術研究センターの廣瀬通孝教授が務める。副理事長に早稲田大学環境総合研究センター客員研究員の平田克二氏,理事にTOEICの創設メンバーとして知られるフォーユー取締役深川善孝氏などが就いている。

 インターネットスキル認定普及協会の資料によると検定のねらいは「特定ベンダー,ハードウエア・ソフトウエアにとらわれないデファクトスタンダードとなる国家資格」を作り「Webに関わる最新の標準・規格に準拠。常に最新でオープンなWebデザイン・スキルガイドラインを策定」することだという。

 しかしウェブ制作の現場,特にページのコーディング現場ではコードの書き方にもトレンドがあるうえに,ブラウザ特性の違いを職人的な知恵と工夫で克服するのが一般的だ。国家資格のデファクトスタンダードは現場力に繋がるのだろうか。早速公式サイトからダウンロード可能な試験の練習問題をチェックしてみる。学科試験の出題範囲は3級といえどもかなり広いようだ。

学生向けの印象

 練習問題には「通信プロトコルの1つに,TCPがある」「FTTHとは,各家庭まで光ファイバを配線する技術である」といった問いの正誤を問う問題から,DNSの役割で正しい項目を選ぶ問題などがあった。XHTMLとHTMLで異なるマークアップの表記に関する引っかけ問題や,ISO/IEC 14496はどの動画フォーマットのものか?という細かい設問もある。

 全体的には用語の意味を確認する問題と,アクセシビリティやユーザビリティに対する認識の確認,基礎的なページ制作方法への理解を測る内容の3つで構成されていた。筆者はVDT作業を行う際のDT機器および作業管理について,の設問が唯一わからなかった。VDTという用語を知らなかったからだが(Visual Display Terminals)の略でディスプレーを見ながら仕事をすることらしい。厚生労働省が健康に与える悪影響に考慮してVDT作業ガイドラインを策定しているのだそうだ。啓発された。なんとか30問中29問正解できた。

 実技の練習問題にはリンク設定の方法やフローチャートにしたがってディレクトリ構造を作る問題などがあった。こちらもウェブページの作り方を知るわかりやすい作業である。

 練習問題から受けた印象は,社会人向けというよりも,学生にウェブ制作を教える教員がカリキュラム制作の目安にしたり,教科の理解度チェックに使うという用途がしっくり来る。よくツールの使い方を教えて終わってしまうカリキュラムが問題視されるが,3級の検定問題に合わせて授業内容を整えるのも手ではないだろうか。難を言えば検定料が1万円と学生にはちょっと高いことくらいであろう。

 即戦力でありたい者としては2級や1級がどの程度の内容となるのか気になるところだが,3級に合格しないとその上の受検資格が得られない。