写真●ZigBeeオープンハウス・イベント
写真●ZigBeeオープンハウス・イベント
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 2008年2月28日,ZigBee Allianceはホテルラフォーレ東京でオープンハウス・イベントを開催した(写真)。展示やセミナーにより,技術や製品などが披露された。26社の展示があり,狭い会場が熱気にあふれていた。「こんなに注目されているのか」と驚いた。

 ZigBeeは,省電力,低コストを目指した短距離無線通信技術である。その仕様を規定しているのがZigBee Allianceだ。国内外のメーカーなど,250以上の企業などがメンバーになっている。下位レイヤー(物理層とMAC層)は,IEEE802.15.4を採用し,その上にZigBeeのプロトコルを載せた形である。

 使用する周波数帯は,800MHz帯,900MHz帯,2.4GHz帯であるが,国内では2.4GHz帯を使う。無線LANで使っているのと同じ周波数帯である。伝送速度は,国内の2.4GHz帯では最高250kビット/秒。到達距離は10~100m程度。作りによっては,見通し1kmくらいは届くという。

 これだけだと,無線LANに比べ速度や到達距離は寂しい限りである。近距離無線といえば,すでに実用化が進んでいるBluetoothがあるし,UWBもある。Bluetoothは最高3Mビット/秒,UWBは最高480Mビット/秒。これに対してZigBeeは最高250kビット/秒。UWBに比べるまでもなく,いまどき250kビット/秒はないだろうと思う。いまさらなぜZigBeeなのだろうと考えてもおかしくない。

電池で数カ月以上動作,容易にカバー範囲を広げられる

 ZigBeeの特徴は,なんといっても低消費電力である。アルカリ単3電池2本で数カ月~2年間動作するという(ZigBee Allianceでは,100~1000日と言っている)。電波出力自体が小さいこともあるが,250kビット/秒と低速であることも低消費電力につながっている。プロトコルを簡素化し,処理能力が低いマイコンで機能を実現でき,これが低消費電力の要素となる。起動も速いため,必要なときだけ動作し,あとは休止するという使い方に向いている。ボタン電池でも,かなり長い期間,動作させられるという。

 また,ZigBeeデバイス間で自律的にネットワークを構成するという特徴も注目ポイントである。Bluetoothでもネットワークを構成できるが,基本はスター型。1台のマスターに7台のスレーブを接続できる。パソコンに周辺機器を接続するイメージである。これに対してZigBeeでは,メッシュ型やツリー型(クラスタ・ツリー型)といった構成が採れる。ZigBeeは,アドホック・マルチホップ・ネットワーク機能を装備しているからだ。

 つまり,各デバイス(ノード)に,データを中継する機能を搭載できる。直接電波が届かないデバイス間でも,間にあるデバイスがデータを中継することで通信可能になる。ZigBeeは最大6万5535のデバイスを接続できる。マルチホップ機能を使えば,かなり広範囲で無線ネットワークを構築できる。デバイスが自律的に経路などを設定するため,導入が容易である。デバイスが一つ故障したりして通信経路が途切れても,自動的に別の経路を設定してくれる。

 電源やネットワークの工事は不要で,簡単に無線ネットワークを構築できるのがZigBeeの魅力である。電池交換の手間がかかるが,その時期はデバイスから通知させることが可能である。

 とはいえ,250kビット/秒と低速であるため,動画などの大容量のデータを送るのには使いづらい。防犯やモニタリングなど,情報そのものよりも通知といったセンサー系などに限られる。それでもZigBeeは面白い。