NECとNECインフロンティアはボタンやディスプレイ,受話器などをモジュール化し,用途ごとにカスタマイズできるIP電話機を出荷する。国・地域によるニーズの違いに応えるために開発したという。機能やインタフェースのカスタマイズは携帯電話の分野で進み始めているが,固定電話の世界でも同様の動きが見えてきた。

 NECとNECインフロンティアは3月,用途ごとにカスタマイズできるオフィス向けIP電話機を出荷する。短縮ダイヤルボタンやディスプレイなどをモジュール化し,それらを“合体”させて機能を実現するのが特徴だ。「UNIVERGE IP Phone DT700シリーズ」と「UNIVERGE Digital Phone DT300シリーズ」の2シリーズを用意した。

モジュール化で違いに応える

 NECインフロンティアの豊島文喜ネットワーク開発本部長代理兼iコミュニケーション事業部長代理は,開発の背景を「以前から世界中で使える電話機の開発を目指してきたが,国や地域によって電話機のボタンやディスプレイにニーズの違いがある。その差分を吸収するためにモジュール型電話機を企画した」と説明する。

 例えば日本ではシンプルでコンパクトな電話機が求められるが,欧米では大型ディスプレイを備えた機種が好まれる。また日本では,代表電話を受けて保留転送するためのボタンが必須だが,欧米のオフィスではIVR(音声自動応答)で受けて個人に転送するのが一般的なため,保留転送ボタンは必要ない。さらに国内外のニーズの違いだけではなく,部署の仕事内容や個人のスタイルの違いにも応えられるだろう。

100種類以上のバリエーション

 用意しているモジュールは電話機本体のほか,短縮ボタン用パネルや追加用ディスプレイ,Bluetoothを使った無線タイプの受話器など(写真1)。慣れれば簡単に取り外し可能で,ブロック玩具のような感覚で組み立てられる。

写真1●モジュールを組み合わせることでIP電話機をカスタマイズできる
写真1●モジュールを組み合わせることでIP電話機をカスタマイズできる
破線で示した部分が電話機の本体である。これにボタンや受話器,ディスプレイ,パネルなどのモジュールを組み合わせることで,右写真のようにカスタマイズされたIP電話機が出来上がる。慣れればモジュール類は簡単に取り付けたり,交換したりできる
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 同社はモジュールを個別に販売するのではなく,各モジュールを組み合わせた23種類の標準パターンを用意し,これらを中心に販売する。標準パターンに無いモジュールの組み合わせにも個別に対応できるとしている。モジュールの組み合わせによるバリエーションは100種類以上になるという。

 サイド・パネルのカラー・バリエーションも5種類用意。「携帯電話の着せ替えパネルのように,固定電話でも利用してほしい」と豊島部長代理は語る。なお,通信機器を国内で販売する際に必要となるJATE(財団法人電気通信端末機器審査協会)の審査は,「すべてのモジュールの組み合わせについて審査を受けた」(同氏)という。

 価格は2万4000円から。NECのSIPサーバー「UNIVERGE SV7000」と連携可能だ。相手の在席状況などを確認できるプレゼンス機能にも対応している。NECはこれらの機種をオフィス向けの主力端末と位置付け,ワールドワイドで展開。今後3年間で500万台の出荷を見込む。