富士通が企業向けモバイル・ソリューションを強化する。目玉はNTTドコモが2008年3月中に出荷するスマートフォン「F1100」。1台で社内の内線電話から,外出先でのメールやスケジュールの確認,業務アプリケーションの利用までをカバーする。モバイル・セントレックスとスマートフォンの“合わせ技”で売り込む。

 F1100はWindows Mobile搭載のスマートフォンというだけでなく,社内の内線電話として活用することを想定した端末仕様になっている。富士通は,携帯電話を社内の内線電話に活用する「モバイル・セントレックス」とスマートフォンの両方の用途を組み合わせることで,新たな需要の掘り起こしを狙う(図1)。

図1●モバイル・セントレックス+スマートフォンのメリットを提供する「F1100」
図1●モバイル・セントレックス+スマートフォンのメリットを提供する「F1100」
FOMA/無線LANのデュアル端末なので外線と内線の両方の用途で使える。Windows Mobile搭載のスマートフォンとしてメールやスケジュール管理,業務アプリケーションの利用も可能。

 FOMA/無線LANのデュアル端末という特徴だけでは「(同じく内線と外線を融合できる)PHSに比べてコストが高くなってしまうので決め手に欠ける」(ネットワークサービス事業本部ネットワークフロントセンターモバイルプロジェクト推進室の鈴木寿・室長)。一方,スマートフォンの用途だけでもコスト面から導入をためらうユーザーが多い。それならば両者の組み合わせで売り込もうというわけだ。

 富士通はユーザー企業へのプレ提案を進めており,150社程度にコンタクトした。「内線と外線の融合を検討しているが,グループウエアと連携させたり,業務端末として活用したりしたいという声は多い。総じて反応は良好で,端末価格の発表待ちというユーザーもいる」(鈴木室長)という。2008年度単年で500社,2009年度単年で1000社の新規ユーザー獲得を目指す。

F1100でモバセンの課題を改善

 富士通はF1100に,モバイル・セントレックスでこれまで課題とされていた「端末の使いにくさ」や「無線LANの構築の難しさ」を改善する仕組みを取り入れた。

 まず,「待ち受け画面を見やすく,片手ですぐに通話を開始できる」(モバイルフォン事業本部の岩城博・モバイルフォン統括営業部長代理)ように,端末の形状をスライド式にした。端末上には4個のカスタマイズ専用ボタンを配置。個々のボタンに「保留」や「転送」,「ピックアップ」などの機能を自由に割り当てられる。無線LANの課題に対しては端末をIEEE 802.11a/b/gの3方式に対応させた。外来波の影響により2.4GHz帯の802.11b/gでは性能が出ない場合,5GHz帯の802.11aを利用することで問題を回避できる。

 富士通は1月から同社のIP-PBX「IP Pathfinder」やSIPサーバー「CL5000」と組み合わせたソリューションを提案し始めた。オプションでプレゼンス管理やWeb電話帳なども提供する。価格はF1100を30台導入した場合,端末価格を除いて約300万円から。F1100の価格は905iシリーズ(5万円前後)よりも若干高くなる程度と見られる。

 F1100は,HSDPA(high speed downlink packet access)を利用した下り最大3.6Mビット/秒の通信機能や指紋認証機能を備える。社外で業務端末として活用するための下地は整っており,今後はメールやスケジュールの閲覧,受発注入力や在庫確認,顧客管理,フィールド保守など業務特化型のソリューションを拡充していく予定である。