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情報共有を手軽に実現する「イントラ向けブログ構築ツール」(前編)

権限設定の細かさに製品差あり

2008/03/25
松浦 龍夫=日経SYSTEMS (筆者執筆記事一覧
出典:日経SYSTEMS 2006年10月号116ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 企業内でブログを利用する動きが出てきている。ある調査では,回答者の65.7%が今後企業内で利用したいとするなど,企業内ブログに対する関心は高い。

表1●主なイントラ向けブログ構築ツール
表1●主なイントラ向けブログ構築ツール
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 企業内ブログの構築ツールが「イントラ向けブログ構築ツール」である(表1)。このツールの最大の特徴は,社内で情報を共有するWebサイトを簡単に構築できることだ。これまで,イントラネットを構築してWebページを更新しようとすると,HTML技術を習得してページを作成する必要があった。

 市販のWebページ作成ツールを使えばHTMLの知識がなくてもよいが,基本的にはWebページを作成するソフトであり,Webサイトの構築ソフトではない。FTPサーバーを使ってWebページをアップロードするといったことが必要で,画面の構成が崩れて修正するときなどには,ある程度の専門知識が求められた。

 それに対してイントラ向けブログ構築ツールを使えば,基本的にはWebの専門知識を知らなくても情報共有のためのWebサイトを構築できる。HTMLを知らなくてもページを作成できるほか,レイアウト変更なども簡単な設定で済む。リンク・ミスなどがあったとしても,編集画面を開いてすぐに修正できる。Webサイトの更新やメンテナンスに苦労していた人にとって,この簡単さは魅力的に映る。

 手軽に情報共有サイトを構築できることで,個々の社員がブログを持ち,自ら情報を書き込めるようになる。このことは大きなインパクトをもたらす。自分のブログであるので,ささいな意見やアイデアでも書き込みやすい。また,そのブログを見たほかの社員も気軽にコメントなどを書き込みやすい。2005年11月から企業内ブログを導入したマルハの山口龍一氏(環境・品質保証グループ グループ長)は,「お堅いイメージの社内掲示板や電子会議室よりも,ブログの方が情報を書き込みやすい」と実感している。

 つまり,「情報が書き込まれない」という情報共有の最大の障壁を乗り越えられる可能性が高い。このことが,従来の情報共有ツール(例えば,グループウエア)との大きな違いである。

 今回はこの「イントラ向けブログ構築ツール」を取り上げ,基本機能(知る)や製品選択時の注目すべきポイント(選ぶ),運用の注意点(使う)を紹介する。

[知る]基本機能は記事編集,ポータル機能も備わる

 イントラ向けブログ構築ツールの基本機能は,(1)記事/コメント編集機能,(2)HTML/RSS生成機能,(3)各種管理機能の三つである(図1)。

図1●イントラ向けブログ構築ツールが備える基本機能と,システム利用の流れ
図1●イントラ向けブログ構築ツールが備える基本機能と,システム利用の流れ
イントラ向けブログ構築ツールの基本機能は,(1)記事/コメント編集機能,(2)HTML/RSS生成機能,(3)各種管理機能の三つである。これらの機能を利用することで,企業システムに必要なセキュリティを保ちながら,情報を共有する
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 (1)は,イントラ向けブログ構築ツールが備える最も基本的な機能で,「社内お知らせ」や「アイデアに対する意見募集」といった記事や,それに対するコメントを作成・変更・削除する機能である。作成した記事は,「カテゴリ」という属性を付けて分類できる。例えば,Linuxに関する記事を書いた場合に,「オープンソース」というカテゴリを付けるといった機能だ。

 また,「トラックバック」という機能もある。これは,書いた記事が別の人のブログにリンクされた場合,リンク元のブログにリンクしたことを通知する機能である。

 (2)のHTML生成機能は,ユーザーが入力した記事やコメントを整形し,ブログのページとして閲覧できるようにする機能である。もう一つのRSS生成機能は,更新情報を他のサーバーなどに配信するためのRSSデータを自動で生成する機能である。RSSを使えば,「プッシュ型」でブログの更新を知らせることができる。

 イントラ向けブログ構築ツールの多くは,(2)の機能を応用し,ポータルページの自動作成機能を備える。新しい記事やコメントの新着情報があると,自動的にポータルページを更新する仕組みだ。

 最後は,(3)各種管理機能である。記事の編集やHTMLの自動生成といった機能が個人向けブログ構築ツールと同様の機能であるのに対し,この管理機能はイントラ向けブログ構築ツール独特のものである。例えば,大量のユーザーを登録し,IDとパスワードを発行する機能がある。ユーザーごとに,ブログを閲覧する,記事を作成する,コメントを書き込む――といったそれぞれに権限(許可か不許可)を設定できる。いつ誰がブログを閲覧したかや,記事を作成したか,といったことのログを取得する機能もある。

ブログで奥義伝承

 カメラ・メーカーのニコン,カシオ計算機(の研究開発部門),主に自動車用コンプレッサーの製造・販売を手掛けるサンデンは,各社員がブログを持って情報共有することに注目した。

 ニコンは2006年2月にドリコムのイントラ向けブログ構築ツール「ドリコムブログオフィス」を研究開発部門で導入。カシオ計算機も2005年3月から,研究開発部門などで米Six Apartの「Movable Type」を導入している。いずれも,研究者が自分の取り組んでいるテーマやアイデアを,自分のブログに気軽に書き込み,研究者同士で意見交換している。ニコンの長谷川修氏(ガラス事業室 企画開発部 主幹)は,「社内が広い上に,研究や実験する時間がまちまちなため,ほかの研究者が何に取り組んでいるか分からなかった。この現状を打破したかった」と導入の狙いを語る。

 サンデンは2006年6月,「業務プロセスのノウハウ共有を目的にブログを導入した」(取締役兼執行役員 標準化推進本部長 牛久保公平氏)。導入した製品は米Traction Softwareの「TeamPage」である。牛久保氏の狙いの一つは,製品設計におけるノウハウの継承である。通常,ファイル・サーバーなどに完成版の設計書を格納しておくことが多い。しかし,「完成版を見ただけでは,悩んだ部分やそれを乗り越えた工夫が,設計者本人以外は分からない。結果,ノウハウがほかのメンバーに伝わらない」(牛久保氏)という悩みがあった。

 そこで,現在取り組んでいるのが,設計者個人のブログに設計書の作成過程で悩んだことや解決方法を書き込むとともに,作成途中の設計書を添付することである。記事は設計書の作成過程に沿って時系列で書き込む(図2)。こうすることで,後輩の設計者が先輩設計者の作業プロセスを追体験でき,作業の勘所をつかめるのではないかと牛久保氏は期待する。

図2●サンデンはブログ導入で,ノウハウの共有を狙う
図2●サンデンはブログ導入で,ノウハウの共有を狙う
作成途中の成果物とともに途中経過を記述することで,ほかのメンバーが完成した設計書だけでは知り得ない業務ノウハウや悩みを追体験できる

電子メールでは埋もれてしまう

 簡単にWebサイトを構築できるというブログの特徴に着目したのが,アステラス製薬とカシオ計算機(の広報部など)である。

 アステラス製薬は2006年7月から,海外マーケティングを担当する社員や自社の海外子会社の社員,自社製品を海外でOEM(相手先ブランドによる生産)販売している企業の社員との間で,マーケット情報や臨床情報,法令情報などを,ブログを使って情報共有している(図3)。

図3●アステラス製薬が利用しているブログのポータルページ
図3●アステラス製薬が利用しているブログのポータルページ
ユーザーがログインすると,まずこのポータルページが表示される。ポータルページでは新着記事や新着コメントを一覧できるため,素早く情報の更新に気付くことができる
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 これまでこうした情報は,電子メールでやりとりしていた。しかし,ほかのメールに埋もれてしまう,やりとりが煩雑になる,などの課題があった。そこで,これらの課題を解決する手段としてブログに注目。TeamPageを導入した。

 コンテンツ更新を担当している吉田恵里香氏(経営戦略本部 グローバルマーケティング部)は,ITの専門家ではないが簡単にWebページの更新ができているという。吉田氏は特に,「次々に更新される情報を一覧できるポータルページ機能が魅力的。この機能を使えば,法令の変化や競合製品の登場など,特に知っていてほしい情報の要約を自動で作成できて便利」(吉田氏)という。

日報利用は難しい面も

 カシオ計算機の広報部門や総務部門,人事部門では,社内お知らせを書き込んだり,部門長が部門の方針などを書き込む「情報発信ツール」としてブログを利用している。カシオ計算機の川出浩司氏(業務開発部 情報技術グループ)は,「これまでは部門ごとにWebサーバーを400台も設置していた。どこにどの情報があるかも分からない状態だったが,ブログのカテゴリやトラックバックを利用することで情報同士がつながり,探しやすくなった。サーバーも約100台減らせた」と語る。

 こうした使い方で効果を上げている一方で,うまく効果が上がらなかった使い方もあった。それは,営業担当者の日報としての使い方である。ブログはフリーのフォーマットであり,日付や訪問先などを決まった書式で記入するような営業日報ツールとは違う。「自由度の高さが災いし,営業担当者が何を書いていいか迷ってしまったようで,続かなかった」(川出氏)という。

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