前回は,ITpro EXPO 2008で実施したワンセグ・トライアルの無線局免許の取得までの経緯を報告した。続いて,実際にどのようなシステムで実験を行ったのか,その詳細について紹介していく。

FeliCaを使って操作性を向上させる

 今回のワンセグ・トライアルでは,多くの来場者に実験に参加してもらうしくみが必要だと考えた。ワンセグ対応の携帯電話機が増えているとはいえ,日経BP社内では,まだまだ少数派というイメージがあった(事実,社内でワンセグ・トライアルのキックオフ会議を開いたとき,15人程度の参加者がいた中でワンセグ対応携帯電話機をもっているのはわずか2人だった)。つまり,すべての来場者が実験に参加できるというわけにはいかない。しかし,ワンセグ・ケータイを持っている人にはすべて参加してもらいたい――。そこで,実験に参加するのに手間取らない仕組みを取り入れた。

写真6●会場で利用した「sumomo」
写真6●会場で利用した「sumomo」
トライアルの紹介パネルにsumomoを埋め込んで,ワンタッチ・チューニングによる操作性向上を目指した。
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 この仕組みが,日立製作所から紹介されたインデックスの提供する「sumomo」というシステムだ(写真6)。

 sumomoは,FeliCa機能を搭載した携帯電話機の操作性を向上させるシステム。FeliCa搭載ケータイをsumomoにタッチすると,事前に設定したURLへアクセスさせたりできる。これをワンセグに活用すれば,sumomoにタッチするだけで,ワンセグ機能を起動して該当チャンネルにチューニングできるというのである。

 しかし,この“ワンタッチでワンセグ・チャンネルにチューニングする”という機能には一つ落とし穴があった。それは,このワンタッチ・チューニングで使えるのが,NTTドコモのワンセグ・ケータイに限られるという点である。

携帯電話事業者で動きが違う

 NTTドコモのワンセグ・ケータイにできて,なぜau/KDDIやソフトバンクのワンセグ・ケータイではダメなのか――。その理由は,ワンセグ放送を受信するチューナー(ワンセグ・ブラウザともいう)の仕様にあった。

 NTTドコモのワンセグ・ブラウザは,起動用のAPIが公開されている。FeliCaタッチをトリガーにしてそのAPIを操作すれば,ワンセグの該当チャンネルを一発で選局できる。sumomoはその仕組みを使っている。それに対してau/KDDIとソフトバンクのワンセグ・ケータイでは,ワンセグ・ブラウザのAPIを公開していないのだ。

 だからといって,ワンセグ・トライアルの対象機器をNTTドコモのワンセグ・ケータイに制限するわけにはいかない。そこでトライアルでは,au/KDDIとソフトバンクのワンセグ・ケータイについては,FeliCaタッチをトリガーとしてWebブラウザのAPIを起動させ,チューニング方法を記載したワンセグ・トライアルのトップ・ページへアクセスさせるという形をとった。sumomoでは,FeliCaタッチしてきた携帯電話の事業者を識別できる。事業者を判断したうえで,その後の処理を変えるように作り込んだわけである。

 (プレビュー記事では,どの事業者の携帯電話でもワンセグ・トライアルのトップ・ページを表示するように書いてあるが,実際にはNTTドコモのワンセグ・ケータイだけはそのまま直接エリア限定ワンセグを受信できる仕組みになっていた)。