話をワンセグ・トライアル本番(ITpro EXPO 2008の展示会当日)に進める前に,コンテンツの話をしなければならないだろう。社内的には,実験局免許の手続きと並行して,ワンセグ・トライアルで流すコンテンツ(映像コンテンツとデータ・コンテンツ)の準備を進める必要があった。

通常のテレビ番組と目的が異なる

 ワンセグ・トライアルのコンテンツは,普通に流れているテレビ番組と比べると,その目的が大きく異なる。テレビ局の制作するテレビ番組は,その番組自体(民放の場合はコマーシャルを含む)を見てもらうことが目的といえるだろう。それに対して,ITpro EXPOのワンセグ・トライアルで流すコンテンツの目的は,「展示会を魅力あるものにすること」。ITpro EXPOの会場に来た人が,ずっとワンセグの番組を見ていてもらっても困る。ワンセグの番組をトリガーとして,ITpro EXPOの講演やイベントに参加してもらい,来場者に「有意義な展示会だった」と感じてもらうことこそ,今回のワンセグ・トライアルの最大の目的といえる。

 他のレビュー記事をお読みいただいてもわかるように,ITpro EXPOでは,編集部が考えたさまざまな主催者企画を会場でご覧いただいた。メインシアターの講演,データセンター・ショーケース,ネットワーク最前線,止まらないシステム基盤/仮想化シアター,ITpro EXPO検定,ITpro EXPO AWARDなどなど。これらの企画がどんなものなのかをワンセグを見ている人にわかっていただくために,まずはこうした企画の紹介ビデオを流すことに決めた。企画を立案した編集部の記者やデスク,編集長に,その概要と見どころを話してもらおうという考えだ(写真8)。さらに,主催者企画やパビリオンに製品を出展する出展者にも登場していただき,見どころを紹介してもらおうと考えた。

ワンセグ・トライアルで流した主催者企画の紹介ビデオ
写真8●ワンセグ・トライアルで流した主催者企画の紹介ビデオ

外部の制作会社に協力を仰ぐ

 日経BP社はこれまでにも映像コンテンツを作ってきた実績がある。その一部は,日経BP社の動画サイト「BPtv」やITpro配下の専門サイト「ITpro Channel」でご覧いただけるようになっている。

 しかし,今回のワンセグ・トライアルでは,ある程度まとまった量の映像コンテンツを用意しなければならない。そうなると,社内のスタッフだけでは手が回らない。日経BP社の制作室映像グループを中心にしつつ,外部の映像制作会社に協力してもらう必要がある。そこで,社内の人脈から紹介してもらった外部の映像制作会社イプシロンに協力を求めることにした。

 ビデオ制作体制はこれで整った。あとは実際の制作に入ればよいのだが,具体的な話になかなか進めなかった。というのも,(1)取り上げる企画の選択,(2)登場いただく記者/デスクの人選,(3)声をかける出展者の対象範囲,(4)出展者の扱い――などを決め切れていなかったからだ。ビデオ制作に不慣れな点がこうした問題として浮上してきたといえるだろう。

 なんとか具体的な番組構成が決まったのは2007年12月中旬のこと。編集企画とパビリオン,さらには会場内にブースを出す日経BP社のCMなど,合計10の企画について紹介ビデオを制作することにした。ビデオの尺(時間)はとくに決めなかった。詳細な番組表を作成している余裕がなかったうえ,実際に,各企画を紹介するのにどの程度の時間がかかるか,まったく予想できなかったからだ。

 筆者がやったのは,各企画の紹介を担当する記者をアサインし,2008年1月10日と11日の二日にわたって社内で撮影できるように調整したことと,「データセンター・ショーケース」や「ネットワーク最前線」といった企画に参加していただく各企業も,担当する編集部にリストアップしてもらったことぐらい。

 あとは,制作室映像グループとイプシロンにまかせてしまえばよい(インタビュアとしてプロのアナウンサーも手配してもらった)。映像制作に関していえば,これで筆者の役割の大部分は済んだ。しかし,個人的にいうと一つ大きな仕事が残っていた。「ワンセグ・トライアル」の紹介ビデオへの出演である。