総務省は2月6日,超小型基地局「フェムトセル」の取り扱いについての規制緩和方針案を公開した。ユーザー宅に引いたブロードバンド回線を中継網として利用することや,利用者によるフェムトセルの設置などを認める内容となっている。3月10日まで意見を募集し,その後方針を策定。並行して電波法の改正を進め,2008年秋ころのフェムトセルの本格展開を目指す。

 フェムトセルとは,家庭内に設置可能な携帯電話の超小型基地局のこと。ブロードバンド回線に接続することで,ユーザー自身が簡単に家庭内に基地局を設置できる。世界の多くのベンダーが開発を進めており,システムは実用レベルに近付いている。

 米国では,米スプリント・ネクステルが一部地域でフェムトセルを使ったサービスを2007年秋に開始。日本ではソフトバンクモバイルが実証実験を始め,NTTドコモも機器を開発するなど取り組みが進んでいる。

 ただし日本でフェムトセルを展開するには,制度が足かせになるという意見が,携帯電話事業者から上がっていた。現行の制度で運用すると通常の基地局と同じ扱いになるため,フェムトセルをユーザーが設置したり電源オン/オフしたりできず,ユーザー宅に引き込んだ固定回線を携帯電話網の一部として使うことが難しいといった点だ。

 総務省は,フェムトセルが高層ビルや地下街などの不感エリアの解消に有効であると判断。固定電話と携帯電話を融合させた新サービスも期待できることから,規制緩和に踏み切る。

段階的に緩和範囲を拡大

 総務省が公開した方針案は,大きく電気通信事業法と電波法に関連する部分の二つに分かれている。総務省は前者に関しては,法適用範囲を明確化することで対処する考え。早ければ2008年4月から緩和策の適用が始まる見込みだ。後者は法改正を伴うため2008年秋ころにずれ込む可能性がある。このため緩和範囲は段階的に広がることになりそうだ(図1)。

図1●総務省が示したフェムトセルの取り扱いに関する方針案
図1●総務省が示したフェムトセルの取り扱いに関する方針案
ユーザーが加入するブロードバンド回線を使った携帯網への接続と,ユーザー自身によるフェムトセルの設置などを認める方針案を示した。3月中に方針をまとめる。ブロードバンド回線の利用は4月以降可能になる見込み。ユーザーによるフェムトセルの設置は電波法改正が必要のため,実現は2008年秋ころになりそうだ。

 電気通信事業法に関する部分では,「ユーザーが契約するブロードバンド回線の利用は事業法上は禁止されるものではない」として,フェムトセルと携帯電話網の接続にユーザー加入のブロードバンド回線の利用を認める方針を示した。ただし通信品質には既存の基地局と同様の値を求めており,緩和案は示さなかった。緊急通報時における基地局からの位置情報通知についても,フェムトセルに現行の基地局と同様の機能の実装を求めている。

 電波法関連の部分では,フェムトセルの運用を通信事業者などの「免許人」以外でも可能にする。その場合の運用責任を明確化するなど,ユーザー自身によるフェムトセルの設置・運用を可能にする方針案を示した。この点については「電波法の改正案として2月5日付で国会に提出済み」(総務省事業政策課)。法改正が国会での審議を経るため,時期は見えていないが,「秋を超えない範囲で適用を目指す方向で動いている」(同)。

 今回示した方針案は,主にフェムトセルを事業者の設備として展開する場合について。将来はフェムトセルを量販店などで販売し,ユーザーが買い取る形についても実現を目指すとしている。こちらについては「4月以降に具体案を示し,別途議論を進める計画」(総務省事業政策課)という。