日本企業が中国に進出するうえで無視できないのが、財務会計ソフトやERPパッケージの中国最大手である用友ソフトだ。実際、多くの日系企業が、中国の会計基準に合わせるために同社の製品を利用している。こうした需要にこたえ、用友はここへ来て、ERPパッケージの日本語化や、日本の会計基準に合わせたデータ変換ソフトを提供するなど、日本企業向けのビジネスに力を入れ始めた。その狙いを、用友ソフトジャパン 代表取締役社長の劉 伝棟(りゅう でんとう)氏に聞いた。

用友ソフトは財務会計ソフトでは大きなシェアを持っている。日本企業の利用状況は。

用友ソフトジャパンの劉伝棟社長
用友ソフトジャパンの劉伝棟社長

 多くの日系企業に利用していただいている。中堅・中小規模の企業に向くERPパッケージのエントリ製品「U8」シリーズが中心だ。小売店などで販売している会計ソフト「通」シリーズも、より小規模の日系企業に利用されている。

 特に、日本企業が中国市場へ積極的に進出するようになってから、ユーザーが増えてきた。これは多くの場合、日本企業の情報システム部門が、現地にシステム担当者を置く余裕がなく、現地法人の情報システムをカスタム開発するよりもパッケージを使って効率的に開発しようと考えているからだ。

 すると、製品の問い合わせやサポート依頼に日本語で対応する窓口が、中国だけでなく日本にも必要になる。そこで2006年3月に設立したのが、用友ソフトジャパンだ。

中堅・中小企業にERP大手の製品を導入する余裕はない

それまで日本法人はなかったのか。

 実は、オフショア開発やシステム運用などのITサービス案件を受託する目的で、2004年1月に「日本用友ソフトエンジニアリング」を設立していた。しかし、2006年9月に中国本社で機構改革を実施し、U8シリーズや通シリーズなどの企業向けソフト製品の事業と、ITサービスの事業を別の組織で扱うことにした。用友ソフトジャパンは、企業向けソフト製品に特化している。

 オフショア開発は難しい時期にさしかかっている。人件費が高騰しているし、人民元切り上げの影響もある。人件費の安さだけが売りのオフショア開発は長く続かない。それよりは、ERPパッケージを軸にしたソフトウエア事業が用友の強みだと考えている。

日本でも中国でも、ERPパッケージの事業では独SAPや米オラクルが大きな壁になるのでは。

 用友のERPパッケージは、3つの特徴で大手ERPベンダーの製品に対抗していく。

 1つは、低価格であることだ。今や中堅・中小企業でも海外進出を始めている。そのような企業の多くは、SAPやオラクルの製品を導入してシステムを構築するだけの資金的余裕がない。SAPやオラクルの製品はもともと大企業をターゲットにしており、導入に数億円かかるケースさえあるからだ。

 その点、用友のエントリ製品「U8」なら1500万円程度、中堅クラスの企業に向けて2007年11月に販売を開始した新製品「U9」でも5000万円程度だ。