これから日本市場に進出しようと考えている中国ITベンダーも多い。監視システムなどを手がけるセキュリティ製品ベンダー、CSST(China Security & Surveillance Technology ,Inc.)もその1社だ。日本と中国では、ITの普及度合いやニーズはもちろん、商習慣なども大きく異なる。CSSTは、これから切り込む日本市場をどう見ているのか。グローバル戦略の責任者である郭 承和(かく しょうわ)副社長 兼 国際アライアンス&インテグレーテッド・マーケティングセンター長に聞いた。

CSSTはどのような事業を手掛けているのか。

CSSTの郭 承和 副社長 兼 国際アライアンス&インテグレーテッド・マーケティングセンター長
CSSTの郭 承和 副社長 兼 国際アライアンス&インテグレーテッド・マーケティングセンター長

 主に4つの事業を柱にしている。(1)監視カメラやセンサー、監視システムなど映像関連セキュリティ製品の開発・製造、(2)製品の販売、(3)製品サポートや運用支援などのサービス、(4)監視システムや映像データベースの構築、だ。

 製品単体のビジネスでは、当社を上回る規模の企業もあるが、製品の開発・販売だけでなくシステム構築まで手がけている点では、CSSTは中国最大手だと自負している。もちろん、製品単体でもトップ3に入る。

 これら4つの事業のうち、これから日本市場に参入したいと考えているのは、製品の販売だ。2007年までは日本の商社を通じて製品を販売していたが、出荷量はわずかだった。2008年からは、CSSTの戦略に基づいて日本企業向けに製品を提供できる体制を作るつもりだ。

日本法人を立ち上げるのか。

 詳細はまだ決定していないが、パートナ企業を通じて製品を提供したいと考えている。どこか1社を総代理店にしてすべてを任せてしまうのではなく、得意分野が異なる複数のパートナを考えている。それぞれ、日本国内におけるブランディングや製品販売、製品サポートと、異なる分野に注力してもらうつもりだ。

日本市場では“目に見えないもの”が重視される

日本市場をどう見ているのか。中国市場との違いは。

 日本におけるセキュリティ関連市場は、毎年10%ずつ堅調に伸びており、ニーズが拡大していると感じている。経営者としてはとても魅力的な市場だ。

 特徴的なのは市場が大きく2極化していることで、値段は高いが良質な製品と、値段は安いが品質は“それなり”の製品に分かれている。この状況は、中国ベンダーだけでなく欧米のベンダーにとっても、市場参入が難しい要因になっている。これは何もセキュリティ関連製品に限ったことではなく、ほかの製品の市場にも見られる傾向だ。

 また、日本市場は成熟しており、製品を購入する感覚が中国とは異なる。中国では価格が重視されるが、日本では接客態度やサービスなど“目に見えないもの”に重きが置かれていると感じている。つまり、単に良い製品だからというだけで売れるわけではない。ユーザーが購入するまでのプロセスをプロデュースしなければ、購買につながらない。

その分析結果は、日本市場への参入に当たって、製品戦略にも影響を与えそうか。

 現時点で当社の開発・製造部門が日本人のニーズをどれだけ把握して製品を作れるかを考えると、未知数の部分もある。しかし、将来的には日本向け製品と中国国内向け製品を個別に開発し、異なるラインで製造することになるのではないかと考えている。

 これは私見だが、日本人は新しいコンセプトを意欲的に取り込み、海外の新しい考え方を非常にうまく吸収する。その一方で「モノ」については非常に保守的だ。こうした対照的な考え方を踏まえた、日本市場向けの製品戦略が必要になるだろう。

複数のパートナ企業を置くのも、そういった日本市場の性格に応じた戦略なのか。

 その通りだ。日本でのブランド確立や、日本企業に合ったシステム構築、サポートなどは、それぞれを得意とする日本企業にお願いしたい。

 中国市場に進出した日本企業の多くは、「Japan Way」を貫こうとしている。日本でのマーケティング手法や製品戦略を中国でもそのまま展開しているようだ。しかし、例えばコンビニは、必ずしも日本と同じように中国で受け入れられているわけではない。

 そういった市場の性格の違いや、商習慣の違いを埋めるパートナを、2008年内には見つけ、日本企業への認知を広めたい。