カブドットコム証券の阿部吉伸・執行役システム統括部部長
カブドットコム証券の阿部吉伸・執行役システム統括部部長

 オンライン証券大手のカブドットコム証券は、齋藤正勝社長を筆頭に技術者が多く、取引サービス用のシステムを自前で開発できるのが強み。他社に先駆けて個人向け株式取引サービスで「逆指値注文」などの多様な注文方法を実現したり、サービスレベル状況をいち早く開示したり、2006年に私設取引システム(PTS)を開始したりするなど、独自性の高いサービスには定評がある。

 同社でCIO(最高情報責任者)を務めるのは、2008年1月に執行役に就任した阿部吉伸執行役システム統括部長だ。阿部部長は同社のIT部門を、「1課」と「2課」の2つに分けて、それぞれの課に全く同じ役割を持たせ、あえて課ごとに重複する職能の担当者を配置している。一見、業務効率化に逆行する体制だが、災害時などにも株式取引サービスを継続できるよう業務継続計画(BCP)を検討して採り入れた。「片方の課の要員が全員いなくなったとしても、運用が回るようにした」(阿部部長)。

 そんな阿部部長の人材育成の哲学は、「これは自分の仕事じゃないから」と誰も言わない組織作りである。自分の仕事ではないから関係ない、と誰かが言い出せば、組織はあっという間に駄目になると考えている。そこで阿部部長は「マルチタレント化」をIT部門の全要員に奨励しているという。担当業務以外の基礎知識も身につけるように働きかけている。

 その一方で、各要員の得意分野を整理する作業も進めている。基礎知識は広く浅く学ばせ、そのうえで専門分野を明確にすることで、全員が主役感を持てるモチベーションが高い組織を作る狙いだ。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・できないことを説明するのではなく、「どうすればできるか」「どこまでできるか」をできるだけ分かりやすく伝えることに気を配っています。取締役代表執行役社長の齋藤正勝は、リーダーシップがあり、「こうしたい」という思いを強く持っています。その思いをいかに具現化してみせるかに知恵を絞っています。

・経営には直接関係しないものの重要なことを、日ごろから蓄積するようにしています。社長の時間が空いている際に、まとめて伝えるようにしています。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・月刊アスキー
・日経ビジネス
・日経コンピュータ

◆お勧めの本
・『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』(ナシーム・ニコラス・タレブ著、ダイヤモンド社)。金融トレーダーの話ですが、ビジネスで物事を決めていくプロセスにおける落とし穴対策を考える上で非常に参考になります。

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
DeviceScape

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー
・学会やベンダーが開催するセミナーのうち、技術動向を理解するのに役立つものに的を絞って参加しています。

◆ストレス解消法
・たくさん睡眠を取ることです。