今回は,「図解をするのが苦手」で,「ちょっとは図解してみようと思っても,どうやって手をつけていいか,わけがわからなくなってしまう」という方のために,一番よく使われる「図解の座標軸」の考え方をお教えしましょう。

 「図解」に使えるのは,紙の上という「2次元の平面」です。2次元ですからタテ方向・ヨコ方向という2本の座標軸をとることができます。その座標軸を使って「図解」の要素を並べていこうというのが今回のテーマです。

 といっても別に「す,数学ですか・・?」なんて敬遠しなくても大丈夫。とりあえずやってもらうのはただ1つ,

  情報に順番をつけること

これだけです。すべての道はそこから開かれます。

■まずは「時間軸」に注目する

 具体的に文面を見ていきましょう。

 インターネットはTCP/IP通信をベースにしているが,そのTCP/IP通信の下層である「IP」には,IPv4とIPv6の2つのバージョンがある。

 現在,実用的に使われているIPv4については,割当可能なIPアドレスが少ないという問題があるため,これを解決可能な次世代プロトコルとして開発されたのがIPv6である。IPv4ではアドレス空間が32ビットしかないのに対して,IPv6は128ビットのアドレス空間を持っているため,アドレス枯渇の問題は解消される。

 しかしIPv4アドレスは当初予想されたほど急激には枯渇しなかったこともあって,2008年現在でもIPv6は普及していない。しかし,Windows VistaでIPv6が標準搭載となり,またIPv4アドレスの枯渇もいよいよ現実味を帯びてきたことなど,普及の条件は整いつつある。

 ルーター,スイッチなどのネットワーク機器のIPv6対応は既に進んでいる。現在,IETFにおいてインターネット全体が徐々にIPv4からIPv6へ移行していく時に生じる問題点や移行方法についての議論が行われている。

と,IPv6について説明した文書です。今回はこれを図解することを考えてみましょう。

 一見,ちょっと長いですし,どこから手をつけていいか戸惑うかもしれません。そんなときは,ぜひ

  時間的な順序関係

に注目してください。

 実は,「時間軸」は,図解をするときに非常によく使われる座標軸です。あまりによく使われるので,先にそれを考えてみるのが手っ取り早いのです。

 では,とりあえず・・・時間軸ですし,「過去→現在→未来」を考えてみましょうか。

 ということで図1です。これは最初のたたき台として使う,非常にラフな案です。

図1●時間軸を考える
図1●時間軸を考える
時間的な順序関係は,座標軸を見つけるヒントになりやすい。

 図1は,「過去→現在→未来」のほかに,別な見方をすると「問題→対処→予想」という流れにもなっています。実はこういう「問題→対処→予想」という因果関係のある流れを見つけると「図解」が非常にやりやすくなります。これが「ラベルつきストーリー」型の図解の一例です。

 「ラベルつきストーリー」型というのは,図2にまとめましたが,要は「ストーリー」を見つけて順番に並べ,そこに適切な「ラベル」をつけたもののことを言います。「ストーリー」は別に「問題→対処→予想」のパターンに限らず,意味のある順番が確定しているものであればなんでもかまいません。そこに「ラベル」をつけるのを忘れないようにしてください。良い「ラベル」があるのとないのとでは,印象が全く違ってきます。

図2●ラベルつきストーリー型の図解
図2●ラベルつきストーリー型の図解
「ストーリー」を見つけてその順番を明示し,適切なラベルをつけてやるだけでも,非常にわかりやすい図解になる。