上勝町の笠松町長
上勝町の笠松町長
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山に落ちている葉っぱを集めて高級料亭に卸す――今や全国的な知名度を誇る徳島県上勝町の「彩(いろどり)事業」。高齢者がパソコンを使いこなしている点でも注目度は高い。上勝町の笠松和市町長は、2008年1月15日に開催された「NEC C&C財団シンポジウム 情報アクセシビリティ-国・地域・コミュニティの役割」において、その“秘密”の一端を披露した。

 上勝町の“葉っぱビジネス”で取り扱っている、葉っぱは320種類あります。なぜこんなものが売れるかというと、都市部には季節感がないからです。節分ならひいらぎ、桃の節句には桃の花、といったようにイベントに合わせて出荷します。南天、もみじの葉、柿の葉は365日売れます。食事をしながらこういった季節感を楽しんでいただくのです。

 ですから、“葉っぱビジネス”では、必要なものを必要な時間帯までに、着実に届けられないと、ビジネスとして成り立たちません。多品種少量在庫のビジネスなのです。そのためには、パソコンはなくてはならないツールです。自分の売り上げがどうなっているか、どんなものが売れるのかというデータがないと、葉っぱを高く売れないからです。

どんな情報を流すかがポイント

 では、なぜ高齢者がパソコンを使えるようになったのか。それには2つの理由があります。 

 まず、高齢者というのは若い人と同じような機械は使えません。例えば、マウスうまくが扱えないんです。そこで、専用のキーボードと大型のトラックボールを開発し、いろどり(葉っぱビジネスを行っている第三セクター)専用の操作が簡単なブラウザを搭載しました。経済産業省の実証実験で導入したのですが、高齢者が直感的に扱えるように工夫しました。

* 専用キーボードの形状などは笠松町長の講演資料を参照のこと。資料はNEC C&C財団のシンポジウム報告ページからダウンロードできる

 さらに重要なのは、高齢者の方に「これは面白いな」と好奇心を持って見てもらえるような情報を作ることです。例えば、「いろどり」の専用ブラウザからは、自分の売り上げ順位を見ることができるようになっています。昨日の売り上げは3番だったとか、7番だったとか、15番だったとかいうことが分かるので、だんだんと面白くなってきます。「年金はあるし、別に稼がなくてもいいだろう」となりがちな高齢者の方にも、面白味を感じてもらえるような情報を毎日流さないとうまくいきません。いかに新しい生の情報を伝えてゆくかが重要です。

 上勝町では、国の補助金を活用して86%の家庭に光ファイバーが入ってます。そして高齢者の方がパソコンを使えるようにシルバー人材センターで講習も行っています。実は「パソコンは覚えなくていいし、テレビもいらない」という人もいます。もちろん、そういう人もいていいんです。ただ、「やりたい」「見たい」という意欲のある人を行政はバックアップしなくてはいけない。私はそう考えています。

 上勝町の高齢化率は48%ですので、全国でもトップレベルです。ありがたいことに、町の高齢者のみなさんは割合と元気で、県内では老人医療費は最低ということです。ですから、ビジネスとして注目を浴びている「いろどり」ですが、高齢者の人の生きがい作りになっているという意味も大きいと思います。