IP電話とインスタント・メッセンジャー(IM)でそれぞれ多くのユーザーを抱えるNTTコミュニケーションズとマイクロソフトがソフトフォンの分野で協業した。Windows Vistaに対応したIP電話サービスを実現し,マイクロソフトが提供するVista対応IMからVista初となる050番号による発信が可能となった。

写真1●Windows Live Callのクライアント画面
写真1●Windows Live Callのクライアント画面
Windows Live Messengerのメイン・ウインドウから「受話器」のボタンを押すとポップアップする。100件以上記録する発信履歴からメンバーをクリックすれば,IP電話網経由で通話ができる。
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 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とマイクロソフトは1月22日,IMから固定電話や携帯電話に発信できるIP電話サービスである「Windows Live Call by ドットフォン」を開始した。マイクロソフトが無償提供するIMである「Windows Live Messenger 2008」の受話器ボタンを押すことで「050番号」を使った発信ができる(写真1)。

 具体的には,Windows Live Messenger 2008のユーザーID一つに対して,NTTコムがIP電話専用の050番号を一つ割り当てる。Windows Live Messengerにログインすることで,インターネット接続環境を問わず,どのパソコンからでも同じ050番号で発信可能となる。そのため,外出先などでも利用できる。


Vistaの問題を提携によって解決

 NTTコムとマイクロソフトが提携した理由の一つは,両社のサービス展開にあたり,解決しなければならない問題があったためである。

 NTTコムは,独自のクライアント・ソフトに050番号を割り当てるソフトフォン「ドットフォンパーソナルV」を2004年から提供している。問題はこのソフトがWindows Vistaでは動作できなかったこと。「原因は不明だがVistaでは音声の遅延が大きくなり,通話しにくい状態を解消できない」(NTTコム)という。同社はこのサービスをパソコン向けの主力サービスと位置付けており,解決が急がれていた。

 そこでNTTコムは独自クライアントではなく,マイクロソフトが無償提供するVista対応のWindows Live Messenger 2008に着目。同ソフトとNTTコムのIP電話サービスを連携させることで,050番号による発信が可能なIP電話サービスを実現させた。Windows Live Messengerをクライアントにすれば,「OSの開発元であるマイクロソフトがクライアント・ソフトの面倒を見てくれる」(NTTコム)という大きなメリットがある。

 他社のソフトフォン・サービス,例えばフュージョンの「フュージョンでスカイプ」やソフトバンクBBの「my BBコミュニケーター」はVistaには未対応。NTTコムは他社に先駆けてVistaに対応したことになる。

年内にもパソコンで着信可能に

 一方マイクロソフトは,海外で既に展開しているVoIP(voice over IP)サービス「Windows Live Call」を日本でも早期に実現したかった。海外ではマイクロソフトは米ベライゾンや仏フランステレコムと提携し,Windows Live Callを提供済みだ。両国では電話番号の割り当てがなくてもIMから既存の電話網への発信ができるため,導入が早かった。

 だが日本では,既存の電話網に発信するには電話番号の割り当てが不可欠となる。そこでマイクロソフトはNTTコムと協業し,同社のIP電話サービスと連携することでこの問題をクリアした。さらに両社は共同で,050番号にかかってきた電話をメッセンジャーで受けられる機能を年内にも提供する予定である。

 Windows Live Call by ドットフォンの料金は,月額基本料が210円,通話料は固定電話あてが3分8.4円,携帯電話あてが1分16.8円。通話料はNTTコムの既存のIP電話サービスと同じである。2008年12月末まではあらかじめ登録した電話番号への着信転送や留守中の伝言を録音するオプションを無料で提供する。