従来の「見える化」から得た重要な教訓の1つは,「ツールの導入だけでは何も見えない」ということ。だが,“使える”経営情報を作り出すためには,多数の関係者が絡む,複雑な検討作業の連続を乗り越えなければならない。そこで道を見失わないよう,実績のあるアプローチ方法を知ることが大切だ。

酒井幸良,村田達紀
NTTデータビジネスコンサルティング


 見える化の進化形である「CPM(Corporate Performance Management)」の取り組みは,決して大げさなものではない。従来の経営管理制度をドラスティックに壊す必要はないし,ERP(統合業務パッケージ)のような大規模な情報システムを一から構築する必要もないのである。今回は,実際にCPMの仕組みを構築するための方法をステップ・バイ・ステップで紹介したい。

 とはいえ,CPMに取り組むとなったら,1つのプロジェクトが単体で活動するのではなく,企業全体,グループ全体での活動となる。各拠点間でのすり合わせや,各拠点における実現可能性の評価,さまざまなキーパーソンの説得など,多くの関係者が絡む複雑な検討作業の連続となるだろう。相応の時間と手間をかける腹づもりが必要だ。

 取り組みの範囲や規模にもよるが,設計作業に着手してから,新しいCPMによる業務運用が始まるまでのプロジェクト期間は,6カ月~12カ月が目安となる。

実証済みのアプローチを利用する

 この取り組みを効率よく進めていくためには,決めるべきことの順番を整理し,段階的かつ確実に進めていくことが重要になる。また,各拠点に調整事項を持ち帰って個別検討や確認してもらう作業には,思いのほか時間がかかるものだ。各調整事項をいつまでに最終化するのか,その期日を公式なマイルストーンとして共有し,徹底的にフォローしていくこともポイントである。

 今回はCPM構築の参考事例として,実際にCPMに取り組んだ製造業C社の作業アプローチを紹介する。

 C社は販売拠点・生産拠点の数が多く,拠点ごとに独自の管理業務,情報システム,コード体系を運用していた。このようにバラバラな状態であったにもかかわらず,C社グループは短期間でCPMの仕組みとルールを構築し,各拠点の実力や課題を正しく把握できるようになった。

 C社の関係者によれば,成功のポイントは,トップマネジメントの強烈なリーダーシップと,後戻りをさせない段階的アプローチであったという。具体的には,図1のように5段階のステップを踏んで進めていった。以下,ステップごとにCPM構築のための作業内容を見ていこう。

図1●CPM構築の5つのステップ
図1●CPM構築の5つのステップ
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