ソフト開発の人材確保と原価削減策といえば、安価な人件費と膨大な人材供給力を背景にした、中国やインドでの海外オフショア開発が一般的。既に多くのソリューションプロバイダが取り組んでいるが、海外オフショア開発にはリスクもある。

 仕様の理解不足から手戻りが発生したり、国内と海外のやり取りに多大なコストがかかる場合もある(図1)。コスト削減を狙ったものの、逆にコストアップになるといったケースも少なくなく、成果を出すまでには相応の投資と期間を要するだろう。

図1●国内の地方人材を活用したシステム開発に注目が集まっている。
図1●国内の地方人材を活用したシステム開発に注目が集まっている。

 NSWの阿部副事業本部長は「国内の地方企業に比べると、海外オフショア開発は、品質やセキュリティ面でどうしても慎重にならざるを得ない」と話す。

 国内オフショア開発は、日本企業の業務への理解やコミュニケーションのしやすさといったメリットがある。そのため開発期間が短く、比較的規模の小さいWebアプリケーション開発や、頻繁に仕様変更が発生するようなソフト開発に向くようだ。海外オフショア開発はパッケージソフトの保守開発など仕様変更が少なく、継続的に一定量の開発を発注するケースに向く。

 コストの面でも国内オフショア開発は、海外オフショア開発と比較してそん色ないようだ。首都圏に比べれば地方の人件費は安く、海外オフショア開発ほどの管理コストが不要になるためだ。

 首都圏向けのソフト開発を専門に手掛けるフロンティアオキナワ21(沖縄県那覇市、饒平名知寛社長)によると、沖縄におけるJavaやCOBOLの開発プログラマの人件費は月額50万~60万円。月額30万円前後の中国と比べると単価は高いが、「総コストを比べると同じ金額でも、中国で開発するソフト以上の品質でできる」(南郷辰洋取締役相談役)。

 今後ソリューションプロバイダは、海外オフショア開発のリスクと国内オフショア開発のメリットを勘案しながら、発注先を選定していくことになるだろう。NSWも国内だけでなく、海外オフショア開発も拡大していく方針だ。

安定受注のための付加価値を

 ただし国内オフショア開発でも、発注側と受注側の役割分担が重要であり、各社はそれぞれ独自の体制作りに取り組んでいる。

 NSWとRCSの協業では、NSWの社員が沖縄のRCSの拠点に常駐し、東京や名古屋の拠点とのやり取りや沖縄における工程管理などを担当。RCSはNSWへの派遣ビジネスの実績を基に、開発手法や品質管理手法などの共有を進めている。

 地方のソリューションプロイダも、国内オフショア開発事業の拡大と安定受注に向け、付加価値向上に取り組んでいる。

 例えば宮崎情報処理センター(宮崎県宮崎市、川崎友裕社長)は、自社で十数人のITコーディネータを育成し、国内オフショア開発事業向けに投入している。要件定義などの上流フェーズから開発案件に参加し、宮崎に詳細設計以降の工程を持ち帰る。伊藤照夫取締役上席本部長兼東京支社長は「単なるプログラミング要員では、安定的な受注を確保できない。システムの企画から開発、保守に至るまでトータルなフェーズで協力できる関係を築きたい」と話す。

 人材供給も安定受注に向けた大きな課題の一つ。数百人規模で日本向けのオフショア開発に取り組む中国企業などに比べれば、日本の地方拠点では「数十人規模の要員をすぐに用意するのは難しいのが実情」(RCSの与那覇社長)だからだ。

 フロンティアオキナワ21は、開発リソースの確保策として、地場のソリューションプロバイダの組織化を進めている。既に約30社、700人の技術者が首都圏からの国内オフショア開発に対応できる体制を整えているという。