システム需要の増加で、ソフト開発に地方人材を活用する「国内オフショア」開発の取り組みが加速している。中国より低リスクでコストメリットも見込めるため、新たな選択肢として注目されている。

 ソフト開発のリソース確保に向けて、海外企業だけでなく国内の地方企業を活用するソリューションプロバイダが増えている(表1)。

表1●ソリューションプロバイダの国内オフショア開発取り組み例(発注側)
表1●ソリューションプロバイダの国内オフショア開発取り組み例(発注側)

 組み込み系ソフト開発で、地方企業の活用を加速させているのが日本システムウエア(NSW)である。提携企業の一社が沖縄県豊見城市にあるアールシーエス(RCS、与那覇正文社長)。RCSはNSW専用の開発ラボを設けており、カーナビ向けのソフト開発を行っている。RCSの約100人の社員のうち、8人がNSWの担当だ。

 NSWは2007年5月、福岡市に自社の開発センターも開設する計画。ここを国内の中核拠点とするほか、今後は地方のパートナー企業との協業も増やすなど、国内におけるソフト開発に注力している。

 ソリューションプロバイダ各社が国内オフショア開発に力を入れる最大の要因は、好景気を背景にユーザー企業がIT投資を急増させていること。ソフト開発の需要に人材確保が追い付かない状況であり、「開発要員を手当てできずに受注を断念する」といったケースが増えているからだ。

 こうした状況は特に東京を中心とした首都圏で顕著。「ユーザー企業の要求はどんどん増えているのに、東京近辺では人が集まらない。そのため海外だけでなく国内の地方企業への発注が不可欠になった」(NSWの阿部典夫エンべデッドテクノロジー事業本部副事業本部長兼企画部長)。

 ユーザー企業の意識の変化もある。コアの井手祥司社長は「ユーザー企業にも、現在の人手不足は異常事態という認識がある。2006年の前半ぐらいから、これまで地方での開発を認めていなかったユーザー企業も、今では理解を示すようになった」と指摘する。

 首都圏と地方のソリューションプロバイダの協業関係は、首都圏向けの派遣など古くからあった。それがシステム需要の高まりを受け、最近は国内オフシェア開発として再び脚光を浴びてきた。派遣で実績を積んだ地方のソリューションプロバイダが、国内オフショア開発事業として拡大するケースが多い(表2)。

表2●ソリューションプロバイダの国内オフショア開発事業取り組み例(受注側)
表2●ソリューションプロバイダの国内オフショア開発事業取り組み例(受注側)