中国屈指の工業都市である無錫(むしゃく)が、ソフトウエア産業の発展に向けた一大政策「123プロジェクト」を立ち上げた。日本のITサービス企業にとってのオフショア開発拠点に変身すべく、無錫は市を挙げてITベンダーの誘致を加速させる。

 無錫市人民政府(以下、無錫)が進める「123プロジェクト」とは、「2010年までに、ITサービス関連事業による輸出額3000万ドル以上で従業員数2000人規模のITサービス会社を、100社誘致する」というものだ。これら具体的な数値の頭が、プロジェクト名称の由来。単純計算すれば、無錫は2010年までに、最低20万人のIT人材を抱えることになる。目標達成のために無錫は、約2億ドルを投じる。

 123プロジェクトは、無錫が2007年10月11日に主催した「中国無錫サービスアウトソーシング産業国際合作コンファレンス」で初めて公表された。「オフィスの賃料補助といった資金援助など、さまざまな優遇措置によって、高い技術力を備えたITサービス会社を無錫に結集させる」。無錫市対外貿易経済合作局の呉峰楓局長は、高らかに宣言した(写真1)。

写真1●中国無錫サービスアウトソーシング産業国際合作コンファレンスで「123プロジェクト」を発表する無錫市対外貿易経済合作局の呉峰楓局長(左)と会場風景(右)
写真1●中国無錫サービスアウトソーシング産業国際合作コンファレンスで「123プロジェクト」を発表する無錫市対外貿易経済合作局の呉峰楓局長(左)と会場風景(右)

 無錫は123プロジェクトに参加するITサービス会社に対して、社員一人当たり10平方メートルのオフィスを1年間無償で貸与。さらに輸出奨励策として、3年連続で輸出額が前年よりも増やしたITサービス会社には、増加額5万ドルごとに1万元(1元=15円換算で15万円)の奨励金を与えるという。

狙いは対日輸出額の増加

 ITサービス会社の誘致による無錫の狙いは、対日ソフトウエア輸出額の拡大である。既に中国のソフトウエア輸出に占める日本の割合は約60%とされる。大連市や上海市、北京市、南京市などがソフトウエア産業基地「ソフトウエアパーク」を作り、対日輸出を急増させているためだ。無錫もこれらに追いつき追い越そうと、123プロジェクトを立ち上げた。

 無錫にとってのライバルは、大連や上海などの“先輩”である。これらの市に対する優位性として無錫は、中国中央政府から初めて「アウトソーシングモデル区」と認定されたことを強くアピール。開発業務だけでなく、運用・保守まで一気通貫で、日本企業からの業務を請け負えるというわけだ。

 無錫は、今回のコンファレンスに「ITソリューションビジネス協議会」(事務局:日経ソリューションビジネス)の各社を招待。NTTデータや大塚商会、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ、新日鉄ソリューションズなど約30社60人の参加者に対し、産業発展に向けた意気込みを訴えた。

 例えば無錫は既に、「無錫国家デザイン園」「太湖国際科学技術園」「無錫国家ハイテク技術産業開発区」など11のサービスアウトソーシングモデル区を作っていること。さらに無錫国家ハイテク技術産業開発区の中にある「iPark」では、ソフト開発やアニメーション/ゲーム関連の研究・開発の“実戦”を積んでいること。加えて、無錫が上海から西に130kmという立地の良さも強調していた。