ITベンダーのオフショア開発規模は2005年度から2010年度までの5年で2.4倍になる――。総務省の調査で急拡大するオフショア開発の実態が浮かび上がった。ただ委託先のほとんどは中国で、米国勢が精力的に開拓するインドへの出遅れが目立っている。

 人月ベースで見た国内ITベンダーのオフショア開発規模は、2007年度に2005年度の1.5倍、2010年度に2.4倍に拡大する。オフショア単価の上昇率を年率5%と仮定すると、2007年度からの3年間でオフショア金額はほぼ倍増する見込みだ。

 オフショア開発に取り組むベンダーの数も増加する。調査に回答したベンダー92社のうち、2005年度時点で開発を委託していたのは48社。2007年度では61社に増え、2010年度には64社が委託すると回答している。

 今回の調査結果で注目すべき点は、委託先だ。相手国の第1位は中国()。オフショアに取り組む企業の約80%が中国と取引があると回答、金額も全体の83.5%を占めている。2位は大きく離れてインド。海外に開発委託していると答えた企業の25%が「インドと取引がある」と回答したが、金額では全体の8.3%足らずだ。

図●日米のオフショア開発の主な相手国・地域
図●日米のオフショア開発の主な相手国・地域
日本は中国、米国はインドへのオフショアが圧倒的に多い

 委託先選定のポイントとして多くの企業が言語やコストを挙げており、委託業務は下流工程が中心だ。

 一方、総務省が米国企業に調査したところ、委託先は圧倒的にインドが多い。オフショアに取り組む米国企業の94.3%がインドと取引があると回答している。委託先の選定理由としてはやはり言語が大きなウエイトを占めるが、それよりも重視しているのが技術力。上流工程の委託も盛んだ。

 米国のITベンダーはインドの人員を急速に増やしている。本誌が調べたインドでの雇用者数は、IBMが約5万3000人、ヒューレット・パッカードが約2万3000人、オラクルが約2万1000人、EDSが約1万9000人、マイクロソフトが5000人超まで拡大している。投資にも積極的で設備面だけでなく、人材教育にも力を入れている。

 インドのソフト・サービス事業者協会(NASSCOM)によるとインドのソフトウエア・サービス輸出先は、7割が米国、2割が欧州で、日本は2%に満たない。

 総務省はオフショア開発の増加について、国内の雇用減を招く可能性は低いと分析する。多くのベンダーが今後、国内開発とオフショア開発の両方で規模を拡大する見通しだが、国内のソフトウエア・サービス産業雇用者数はここ数年横ばい。ベンダーの期待ほど国内の開発案件は伸びないとしても、「雇用が減る心配は少ない」(総務省情報通信政策局の井上知義 情報通信経済室長)としている。

 今回の調査は総務省が2007年7月3日に発表した平成19年版の情報通信白書の一部。国内のオフショア開発では、上場企業3528社と非上場の情報サービス関連企業1104社の計4632社に対して2007年2月にアンケートを送付。514社から有効回答を得た。米国企業にはWebでの調査を実施、160社から有効回答を得た。