代表的なP2Pファイル共有ソフトを挙げよと言われたら,WinnyやShareと並んで必ず出てくるのがBitTorrentだろう。ところが,同じように多くの利用者がいるにもかかわらず,BitTorrentではしくみ上情報漏えいが起こりにくいという。それはなぜだろうか。

ファイル共有のしくみが根本的に違う

 BitTorrentを使ったファイル共有のしくみをひと言で表すなら,「目的のファイルをダウンロードしたいパソコンを集めて小さなネットワークを作り,お互いに助け合いながらダウンロード完了を目指す」となる(図6-1)。例えばLinuxのディストリビューションなど数Gバイトもあるようなファイルをダウンロードする際によく使われる。

図6-1●BitTorrentのしくみ
図6-1●BitTorrentのしくみ
大容量のファイルを高速に配布する目的で開発された。ファイル検索やアップロードのしくみがファイル転送用のネットワークと切り離されているため,Winnyなどと比べると暴露ウイルスによる情報漏えいが起こる可能性は低い。
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 BitTorrentを使いたいユーザーはまず,目的のファイルについての情報が書かれた「Torrentファイル」をWebサイト経由でダウンロードする。このTorrentファイルには,ファイルの名前などの基本情報に加えて,「トラッカ」と呼ぶ特別な役割を持ったパソコンのアドレス情報が書かれている。

 Torrentファイルを入手した参加者がBitTorrentクライアントを使ってトラッカにアクセスすると,トラッカは「ピア」と呼ぶダウンロードに参加中のほかのパソコンのアドレスを教える。そして,ピア同士はトラッカの監督のもと,それぞれが持つ不完全なファイルを補い合うなど協力しながらファイルをダウンロードする。

 このように,BitTorrentでは検索とファイルのやりとりのしくみが完全に分離しているため,暴露ウイルスなどによる直接的な情報漏えいが起こりにくい。Winnyのように,ファイルを公開すれば黙っていても自然に検索で見つかって漏えいするソフトとは根本的にしくみが異なるのだ。

 ただし,ダウンロードするファイルに暴露ウイルス以外の危険なウイルスが含まれている可能性は当然ある。正しい使い道があるといっても会社で必要なケースはやはり少ないはず。どうしても必要でない限り,会社では止めておくのが無難だ