ネットワーク部門でAWARDを受賞したNTTアドバンステクノロジの「Webアクセスシェイパ」は,独自技術を使ったリクエスト流量制御型の負荷分散装置だ(写真1写真2)。Webサーバーやバックエンドのデータベース(DB)サーバーの負荷状況を自動的に検出し,リクエスト流量を調整してアクセス集中時のWebサーバーの稼働率を最大化する。Webサイトのレスポンス低下によるユーザーのイライラ感を解消したり,混雑時に処理しきれないリクエストに対して即座にビジー・メッセージを返したりすることが可能になるため,Web上のサービスに対する顧客満足度の向上が図れるという。

写真1●ネットワーク部門でAWARDを受賞した「Webアクセスシェイパ」   写真2●ITpro EXPO 2008展示会のNTTアドバンステクノロジのブース'
写真1●ネットワーク部門でAWARDを受賞した「Webアクセスシェイパ」
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  写真2●ITpro EXPO 2008展示会のNTTアドバンステクノロジのブース
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 インターネット上の電子商取引(EC)サイトなどで,「チケット購入ボタンを押したのに反応が返ってこないので,本当にチケットを購入できたかどうか分からない」,「項目数が多いWeb入力フォームをすべて書き終えて送信ボタンを押したところ,そこでエラーが返ってきてしまい労力がすべて無駄になった」などといった経験をした人も少なくないだろう。Webサーバーに対するアクセス集中などによって,こうした現象が引き起こされる。

 Webサーバーのアクセス集中を防ぐには,一般に負荷分散装置(ロードバランサー)をフロントに設置することが多い。しかしロードバランサーでは,こうした現象を完全には防げないという。「ロードバランサーは一般に,コネクション数やパケット・レートなどによりWebサーバーの状況を間接的に把握して負荷分散を図る。しかし,実際にボトルネックになっているのはその裏のDBサーバーだったりすることが多い。そうした場合,一般的なロードバランサーでは対処できない」(NTTアドバンステクノロジ アクセスネットワーク事業本部 第一オペレーションシステム事業ユニットの野口修主査)。

DBサーバー・アクセスを含めたWebの応答時間をリアルタイムに把握

 これに対してWebアクセスシェイパは,DBサーバー・アクセスを含めたWebの応答時間をリアルタイムに把握し,リクエスト流量を調整する。応答時間の短いWebサーバーに優先的にリクエストを割り振ったり,事前に設定した応答時間の最大値を超えそうになると,即座にビジー・メッセージを表示して無駄にWebサーバーにアクセスさせないようにする。こうして,Webサーバーの能力を最大限に生かしながら「途切れない,待たせないサービスを提供する」(野口主査)。応答時間の最大値は,デフォルトでは5秒に設定されているという。

 また,応答時間のリアルタイム把握は自動的に行われるため,Webサーバーの能力差などによってWebアクセスシェイパに複雑な設定を施す必要もないという。「新しいWebサーバーを追加したときも,ネットワーク設定など簡単な設定をするだけ。あとは,Webアクセスシェイパが応答時間に基づき,新サーバーを含めて自動的にリクエストの割り振りを行う」(野口主査)。

 さらに,会員や先行顧客などの優先処理を行うこともできる。具体的には,URLやユーザーのCookie情報などを基にして優先すべきリクエストかどうかを判断する。例えば,チケット・サービスを利用しているユーザーの中でも,既に購入画面のURLにアクセスしているユーザーのリクエストを優先的に処理する。こうすることで,「購入ボタンを押したのにレスポンスが返ってこない」といったトラブルを防げる。

既存のロードバランサーとの併用が効果的

写真3●Webアクセスシェイパ本体
写真3●Webアクセスシェイパ本体
1Uのラックマウント型アプライアンス製品。
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 ただしWebアクセスシェイパも万能ではない。一般的なロードバランサーがFTPなど様々なプロトコルに対応しているのに対して,WebアクセスシェイパがサポートするのはWebアクセスのHTTPだけ。SSLもソフトウエアで処理する。DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃に対する防御機能も備えていない。このため,「特に大規模ユーザーの場合は,既に所有しているロードバランサーとの併用が効果的」(野口主査)だという。

 Webアクセスシェイパは,NTT未来ねっと研究所が研究開発した「Webサーバ過負荷制御技術」を基に,NTTアドバンステクノロジがアプライアンス装置として製品化したもの(写真3)。発売は2007年11月20日。価格は1台当たり262万5000円。オプションとして,GUIベースの管理システム(ソフトウエア)も1ライセンス21万円で用意する。また2年目以降は,1台当たり21万円の年間保守費用が必要になる。