次に,企業向けのシステムに特化したタイプのRIA技術を見てみよう。Biz/Browser(写真5)やCurl(写真6),Nexaweb(写真7)である。
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写真5●アクシスソフトのBiz/Browser Windows Mobile版もある。 [画像のクリックで拡大表示] |
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写真6●カールが提供するCurl 開発はCurl言語を使う。 [画像のクリックで拡大表示] |
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写真7●日本ネクサウェブのNexaweb 金融や電力,通信事業者のモニタリング・システムなどで使われているという。 [画像のクリックで拡大表示] |
Biz/BrowserやCurl,Nexawebにはそれぞれの特徴があり,国内での導入実績も多い。今後,視覚的効果を高めたいユーザーがFlashやSilverlightに流れる可能性は否定できないものの,実績を重視するならBiz/BrowserやCurl,Nexawebが選択肢に上る。
アクシスソフトが開発する国産のBiz/Browserは1999年の発売から8年で,ヤマト運輸や大成建設など550社以上の導入実績を持つ。同社が用意するツール「Biz/Designer」を使えば,比較的容易に開発が行える。
元々,米マサチューセッツ工科大学で開発されたCurlも国内で普及している。現在まで340社以上がCurlを導入。BtoCでも三菱東京UFJ銀行のインターネット・バンキング・サイト「MUFGネットプラザ」に採用されている。日本ネクサウェブのNexawebはクライアントだけではなく,「Internet Messaging Bus」(IMB)と呼ぶ通信ミドルウエアを提供する点が特徴だ。IMBによって通信時のデータ圧縮や,サーバーからクライアントへのデータのプッシュ配信といった機能を容易に実装できる。また,クライアントはJavaアプレット,スタンドアロンのJavaアプリケーション,Ajaxのいずれかの方式で実装できる。
これらのRIA技術は,旧来のクライアント/サーバー型システムからのリプレースで採用されることが多い。長年使ってきたクライアントを,操作性を完全に再現しつつ,最新技術で安価に作り直したいといった要望に応える。
Java開発者に“JavaのRIA”を提供
新しいRIA技術としてはもう一つ,まだ開発途上の技術ではあるが,サン・マイクロシステムズのJavaFXも挙げられる(写真8)。サンは「Java開発者へ“JavaのRIA環境”を提供したい」(山口浩チーフ・テクノロジスト)という。
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写真8●サン・マイクロシステムズのRIA技術であるJavaFXのデモ画面 文字の表示などにアニメーションを利用できる。 [画像のクリックで拡大表示] |
これまでJavaでクライアントを開発する場合,多くは「Swing」というGUIライブラリを使っていた。ただ,Swingはソースコードの記述量が多くなり,プログラマ以外には分かりにくいという難点があった。そこでJavaFXでは画面を設計するデザイナーにとっても分かりやすいスクリプト言語「JavaFX Script」を用意し,RIA開発の生産性向上を狙う。
JavaFXはパソコンだけではなくデジタル家電や携帯電話などへの展開も視野に入れる。多様なデバイスにJavaFXでRIA環境を提供しようというのがサンの狙いだ。現時点でJavaFXにはインタプリタしかないので性能面ではAIRやSilverlightなどに大きく劣るが,目下,高速処理を実現するコンパイラを開発中である。
見栄えは良いが操作性軽視では本末転倒
ここまで見てきたように,ユーザー企業にとっては自社に適したRIA技術を選択できる環境が整ってきた。RIA活用の機運も高まっている。前編で紹介したIntraKaKiKoなど,最近は企業内でもコミュニケーション・システムなどで動画が使われ始め,リッチなクライアントを必要としているケースは少なくない。“魅せる”ことを重視するRIA技術は企業の業務システムのクライアントでますます利用が進むだろう。
ただ,注意したいこともある。RIA,とりわけFlashやSilverlightなどが持つ高い表現力に気をとらわれ過ぎると,“アプリケーションの使いやすさ”をないがしろにしてしまいがちなことだ。
RIAコンソーシアムの運営委員長を務めるビジネス・アーキテクツの三井英樹氏は「RIAがブームになると,見栄えが良く見た目はリッチだが,操作感がいまひとつの“なんちゃってRIA”が増える」と指摘する。
RIA技術を利用する目的は,あくまでも使いやすいアプリケーションを開発することにある。過剰なアニメーションや動画像の利用によって操作性が低下したとすれば,それは本末転倒である。