東芝のレコーダー/プレーヤーの総合カタログ
図1●東芝のレコーダー/プレーヤーの総合カタログ
 日経エレクトロニクスとTech-On!がITproの協力を得て実施した緊急アンケート「東芝の決断の意義を問う」では,読者から多くの意見が集まった。自由意見を求める質問に対して回答者の大多数が記入したことが,関心の高さを物語っている。ここでは,読者の意見から浮かび上がる,今回の決断に対する評価と東芝が採り得た代替案をまとめてみたい(注1)。

注1)以下で紹介するコメントは,2008年2月21日までに寄せられた回答に基づく。アンケート結果の最終的な結果は,日経エレクトロニクスの3月25日号で紹介する予定である。

 回答者の意見を読むと,大きく二つの視点があることが分かる。経営の観点からの評価と,消費者の観点からの評価である。以下では,それぞれの視点でどのような評価が下されたかを順次紹介していく。

英断か,無謀な挑戦か

 今回の調査では,経営の視点からの評価は真っ二つに分かれた。東芝が今回下した「撤退」という決断に対して,英断として高く評価する意見と,そもそも事業化する前に統一を図るべきだったとみなす意見である。

 二つの意見が相半ばすることを端的に表すのが,「HD DVD事業撤退を決めた東芝の決断をどのように評価しますか。(一つ選ぶ)」との問いに対する回答である。 調査の中間結果では,「現時点における適切な判断だった」と「もっと早く決断すべきだった」のそれぞれを選んだ回答者はほぼ同数で,いずれも全体の47%を占めた。前者を選んだ回答者では今回の決断を高く評価する声が多く,後者ではそもそも勝ち目がなかったとする意見が目立った。

 なお,「あきらめずに,もっとがんばってほしかった」を選んだ回答者は全体の7%弱と少数派だった。

絶妙のタイミングで判断

 東芝の判断を肯定する意見で多かったのが,市場の変化を見極めて迅速に意志決定したことを高く評価する声だった。「市場の状況に対応した“即決”対応は素晴らしい。西田社長の決断力を買いたい」(LSI/FPD/医療機器/電子部品,役員・経営者,60歳代)(注2),「普通の会社なら決断できずに継続しているはず。素晴らしい経営判断をされたと思います」(コンピュータ/システム,技術者兼管理者,50歳代)。

注2)「」内はコメント,()内は順番に,専門分野,役職,年齢を示す。コメントは読みやすさを考慮して編集している場合がある。

 東芝がHD DVD事業からの撤退を発表したのは,今後の市場の趨勢を決定づけたとされる米Warner社の発表から,わずか1カ月半後。判断が早かったため,「それほど次世代DVDがひろまっていない状況なので,被害が最小限にとどまった」(コンサルティング,技術者兼管理者,40歳代)とみなされたようだ。加えて,日本企業は迅速な経営判断が不得手との意識が強いことも,評価を高めた一因とみられる。「もっと早い決断に越したことはないでしょうが,他の企業ならば決断の時期がもっと先へ行ったのではと思います」(コンピュータ/システム,技術者兼管理者,50歳代)。

 アンケートの問いにあった「(東芝は)もっと早く決断すべきだった」という選択肢に対しては,事業に踏み切ったことには合理性があり,事業を始めた前提では現時点が決断の好機だったとの声があがった。「結果論で言えば,もっと早く,あるいは最初から統一規格にまとめるべき,との意見もあろうが,それは理想であり結果論。企業活動,経営,技術革新,いろんなファクターを総合すれば,それぞれに良いところもあれば悪いところもある。結果が出た後からなら誰でも何でも言える」(コンピュータ/通信端末/民生機器,技術戦略企画,50歳代),「今から振り返れば,もっと早くに,と言いたい気持ちは当然ありますが,ビジネスに臨む者として,簡単に諦める姿勢が論外なのも理解できます。既にビジネスに踏み込んでしまった事を前提に語るなら,ベストのタイミングだったと思います」(FPD/民生機器,30歳代)。