写真●競技会の様子(第5回大会より)。「レゴ マインドストーム」で作成したロボットを組み込みソフトで制御し,コースのラインに沿って自律的に走らせる
写真●競技会の様子(第5回大会より)。「レゴ マインドストーム」で作成したロボットを組み込みソフトで制御し,コースのラインに沿って自律的に走らせる
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 「ロボコン」をご存知の方は多いだろう。学生たちが自作のロボットを持ち込んで行う競技会だ。特に,1988年から毎年実施されている「高専ロボコン」(正式名称は全国高等専門学校ロボットコンテスト)は,大会の様子がテレビでも放映されており,熱戦の模様には記者もつい見入ってしまう。

 最近になって,もう一つの“ロボコン”の人気が急上昇している。「ETロボコン」である。正式名称は「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト」,ETはEmbedded Technology(組み込み技術)の略称だ。ETロボコンの特徴は,正式名称からわかるように「ソフトウエア」に力点を置いているところだ。ハードウエアは全チームとも教育用ロボットキット「レゴ マインドストーム」を利用し,制御用のソフトウエアに工夫を凝らす。

 2002年に第1回大会が開催され(当時の名称はUMLロボコン),今年(2008年)の大会で7回目を数える。第1回は参加チームが約20と小規模だったが,第4回には約50チーム,第5回には約100チーム,第6回には約180チーム,そして今年の第7回は約250チームの参加を見込んでいるという。参加するチームは企業が多いが,大学も増えてきている。

 主催の社団法人 組込みシステム技術協会によると,コンテストの目的は「若年層の初級エンジニアに実践教育の場を提供すること」(コンテスト運営委員長の小林靖英氏)である。上流のモデリング,実装,テストまでの一貫した工程を体験することは,若手技術者の成長にとって大きなプラスになるだろうという。大会前に何度か,主催者による教育セミナーが開催されているが,そのほかに「参加者はみんな,休日に自主的な勉強会などを開いて大会に臨んでいるようだ」(同)。

走行競技のタイムと設計モデルで競う

 競技会そのものの内容は,決められたコースに沿ってロボットを自律走行させてタイムを競うというものだ(写真)。基本的な走行性能に加えて,コースに用意されたいくつかの難所をどのようにクリアするのかも見所になる。ハードが同一なので,ハードに搭載する組み込みソフトのプログラミングの良し悪しが結果に反映されることになる。

 また,走行競技の成績だけでなく,制御を行うプログラムの設計モデルについても別途評価して表彰している。これは組み込みソフトが今後,より複雑化,大規模化するのにあたって,設計モデリングが重要になることを考えてのことだという。「最初のころはプログラムの設計モデルの良し悪しと走行競技の成績にあまり相関が見られなかったが,最近は上位3分の1程度にチームについては相関が見られるようになってきた」(小林氏)。

 今年の第7回大会は,2008年7~9月に東北,関東,東海,関西,九州でそれぞれ地区大会を開催し,11月19~21日に組み込み技術の展示会「ET2008」でチャンピオンシップ大会を実施する。「目指せ 日本最強の組み込みエンジニア」をうたい文句にして行われる競技会における熱い戦いを楽しみにするとともに,大会への参加による若手技術者たちの成長に期待したい。