顧客の流れがトラフィック

 人車船の往来や交通をそう呼ぶが、ネット上での人々の動きも同じ概念で捉えられる。リアルの社会でもそうだが、人々の行動やその流れ、集まる場所など、一定の切り口で調べるといろんなことが見えてくる。

 特にネット上ではその動きも内容も肉眼で捉えることができないため一層理解を不鮮明にしているのかもしれない。しかし、ここ数年これらの動向を分析するツールやASPも種々現れており、適宜目的にあわせて利用されるといいだろう。(このあたりの話は第5回アクセス解析をご参照いただきたい。)

 トラフィックを把握しイメージできることが該当サイトの今後を大きく左右するといっても過言ではない。逆に、この視点をもたずに運用を続けることは、無駄な時間と費用のみが垂れ流されていくことになるだろう。

 また、まちがった展開を続けることによって、意図しない、ブランドイメージへのネガティブな作用となって働く場合もあるのでくれぐれも注意された方がいい。

 トラフィックは世の中の出来事やちょっとした変化で影響を受けることが多い。したがって、交通管制室ではないが、できるだけいつでも監視できるようにし、リアルの出来事と該当サイトに関連するトラフィックの変化の相関性を肌で分かるようになっていたい。

 さらに、デザイン変更やアイコンの位置、インデックスのラベリングの変更、新規コンテンツの影響など、常にそれに対するトラフィックの変化をつかんでおくべきだ。

トラフィックの中身

 今までは、アクセス数あるいはユニークビジター数などとしてその絶対値に主眼をおいて検討されたケースが多いと思うが、よくよく考えると、果たしてその中身はどうなっているのだろう?という疑問がわいてくる。

 リアルのビジネスでは昔から、男女、趣味、年齢、年収、、、などあらゆる切り口で調査をしてクラスター分析をおこなっている。

 ネット上では視聴率調査のASPなどを利用すると、リアルのマーケティングで苦労した調査も比較的早くしかも楽に調べることができる。この視聴率調査とアクセス解析を複合的に活用すると、トラフィックも立体的に見えてくるため現実味が出てきて、ビジネス上でも有効な指標となる。

 このように同じアクセス数、ビジター数であっても、その中身は多様であり、その質はかなりダイナミックレンジが広いのは確かなようだ。したがって、一部のデータのみで判断するのは真の結果につながらないため、危険なことでもある。

 サイト開設の目的や顧客のターゲット層などは各サイト異なるわけだが、目標やゴールに向けてそのトラフィックの質を想定に近づけたほうがいいに越したことはない。

トラフィックの質

 例えば、このような例がある。あるネット保険会社は、従来メディアも含むいろんなメディアへ広告を出し、URLを告知している。また、ネット上のニュースサイトなどへの広告掲載や一般サイトとの相互リンクなどもおこなっている。

 保険会社は成約率と成約後の不正行為などの事故率などあらゆる指標で分析しているが、トラフィックを分析し、上記の各種メディア別の成約率などの指標を分析すると、トラフィック別にかなりはっきりした特性があることが分かってきた。つまり、流入してきたトラフィックによる質の違いが分かってきたのである。

 このあとはどのようなステップに移ればいいのかは、賢明な読者の方々であれば説明する必要もないだろう。

 また、このことは、その他いろんなことを示唆している。質の高いトラフィックを集めると、売り上げも上がるが、逆に、そのトラフィックをほかと共有したり、相互にパスをつくり新たなアライアンスを組むことにも発展する。

 つまり、質の高いトラフィックを作ることがそのサイトの価値を高め、利益やブランドイメージの向上にもつながる結果となる。これは、大きな含み資産ともいえるかもしれないし、換金可能なビジネスモデルになるかもしれない。

どうすればいいのか

 サイト側で何もしないと、リアル社会でも同様、平準化し、特に目立たない存在となり、最終的にはその意義すらなくなるだろう。

 やはり、コンテンツがその大きな役割を果たすはずだ。ビジネス情報はもちろんのこと、企業の考え方、マナー、顧客対応姿勢、意志、姿勢、夢など‥挙げればきりがないが、常にサイト全体を通じて法人としての意志を発信し続けなければならない。変化とスピード、常に新鮮で良質な情報を提供していくべきであろう。

 水道水をきれいにする活性炭、空気をきれいにする清浄機、海水を淡水に変えるフィルター‥‥などなど。コンテンツはまさしく、有象無象のトラフィックを整流し、その質を高めていく存在だと思う。コンテンツに英知を注ぎ、企業価値ひいては関連する企業との協調によりさらにその質は研ぎ澄まされ価値を高めていくことだろう。